①国生み神話と火山


 ここからは読者が日本神話をある程度知っているという前提で書く。GHQの教育改悪によって現代の我々は学校で古事記や日本書記を学ぶ事はないが、おそらくどこかで聞いた事はあるだろう。



①国生み神話と火山

 国生み神話はイザナギ、イザナミの二神が国を生んだという神話である。国を生んだ母神の偉大さと共に、近親婚の危険性について警告している。以下、大まかなあらすじである。


 遥か高い空の上、高天原という土地があった。神々は下界に国を作ろうと決め、イザナギ、イザナミに天沼矛あめのぬまほこを渡した。ナギナミは天浮立という巨大な橋から下界を見下ろすと、国は油が漂うように水に浮いていた。

 これに矛を突き立て、ぐるぐるかき混ぜてから引き揚げると、矛先から滴り落ちた泥が島になった。オノゴロ島である。

 ナギナミはオノゴロに下りて、次の子を生んだが、手足の萎えた子供(蛭子)であり、葦船に乗せて流した。次に産んだ子は小さかったので、子供として勘定しなかった(淡島)。

 二人はなぜ、失敗したのかを考えた結果、他の神に相談して、やり方を変えた。そして、今度は淡路島、四国、隠岐、九州、壱岐、対馬、佐渡、最後に本州を生んだ。他にも六つ小島を生んだが、最後に生まれた子供は火を纏って産まれてきた(カグツチ誕生)。

 カグツチはイザナミを焼き、怒ったイザナギはカグツチを斬った。その血や死体から、十六柱の神々が生まれ、イザナミは黄泉国へと行ってしまう。



 ワノフスキー説では、これは鬼界カルデラ噴火災害の後、被害地域の復旧を表すのだという。四国九州地域は鬼界カルデラ噴火後、火山からの噴出物で海面にドロドロとしたものが浮いている状態だったと思われる。約1000年をかけて、人が住める土地に復旧していくわけだが、それが神が島を生んだという神話になったのではないかとワノフスキーは語っている。


 また、天沼矛についても、海底火山から立ち上る噴煙はさながら天から巨大な棒を突き立てているように見えただろうと言っている。


※数日前、インドネシア噴火災害が起こった(どこかでマレーシアと書いてしまったが、勘違いでした)。その映像は確かに天井から何かが突き刺され、かき混ぜているようにも見える。興味のある方はインドネシア噴火の映像を見てみてほしい。


 日本に矛というものが存在するようになるのは、おそらく紀元前1000年あたりのことなので、「巨大な棒」が「巨大な矛」に変わるのはそれ以後の事と考えられる。銅矛などが示す通り、矛は権威の象徴でもあったので、いつしか矛が取り入れられたという可能性はある。


 カグツチ誕生とカグツチから多くの神々が生まれるところなどは、火山による破壊とその後の想像を想起させる。

 ちなみにワノフスキーはイザナミが火山神だと語るが、私はイザナミは大地を表しており、カグツチの方が火山神として相応しいと感じている。それともカグツチは単に「火」そのものの象徴だろうか。


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