第7話 二人で朝食を
翌朝
鳥の
「ふう……すごい夢だったなぁ。超絶美少女悪魔っ娘が俺の部屋に来て結婚する夢なんて」
カーテンを開けようと顔を横に向けると、同じ布団にすやすやと眠る超絶美少女悪魔っ娘がそこにいた。
「うわぁああ! 夢落ちじゃなかった」
思わず布団から飛び起きてしまった。
「ふわぁあ。何じゃ。騒がしいのう。おお正宗や、おはようなのじゃ。すっかり良くなったみたいじゃな。よかった」
「お……おはよう。フラン」
「どうしたのじゃ?」
「いや、夢と現実がごっちゃになっていた」
手を額に当てて汗をぬぐう。
「寝不足か?」
フランが俺の眼を覗く。
「いや、そうじゃなくて。フランが来てくれていたのが全部夢だったと思っていたんだ。ってことは体の痛みも熱も本当だったのか?」
「妾が治癒魔法で緩和したのを覚えておらぬのか?」
「あれも現実だったのか。ありがとうフラン。助かったよ本当に。全身が焼けて張り裂けそうだったから」
「ま……まあ、礼には及ばんのじゃ」
フランは照れ臭そうに赤面し横を向きながら頬を指で掻き始めた。
フランを思わず抱きしめ、頭に頬ずりをする。角が頬にあたって痛いけど贅沢な痛みだ。
フランの緑色の髪の毛からいい香りがしてくる。
「フラン、いい匂いするね」
「そ、そうか?」
「うん。角もとっても可愛い」
フランの角を指で触ると、クリスタルの表面のように滑らかな感触が伝わってくる。
「きゃん!」
「あ! 痛かった? ごめん」
フランの顔を覗き込むと、顔が赤くなっている。
「そこは敏感なのじゃ……」
「ごめん。俺達人間には角がないから、つい……」
「正宗はもう人間ではないが……まあ 判らんでもないが」
「朝ごはん作るね。今日は会社休みだから、フランの下着とか服を買いに行こうね」
「朝食を作るのは嫁の務めじゃ。妾が作るから」
「こっちの食材使うの初めてでしょ。じゃあ一緒に作ろうか」
フランに調理器具の使い方や食材の調理方法を説明しながら調理を始める。
あ、これでエプロンがあれば最高じゃないですか!
よし、エプロンも買うぞ!
脳内の妄想エンジンが、裸エプロンの新妻とイチャコラするシーンを描き出す。
「このガスコンロというのは、中に火の魔石が入っているのか?」
「魔石じゃなくてプロパンガスっていう燃える気体なんだよ」
「卵は妾の世界にもあるが、これは色が黄色じゃの」
「そっちはどんな色なの?」
「殻が青で、中身は紫じゃ。この黄色の周りの透明なところは赤色じゃ」
「随分とカラフルだね」
「妾から見れば、この卵もカラフルじゃ」
ところ変われば品変わるだ。
ベーコンエッグを作りながらフランはまじまじと卵を見ている。
「これは
フランの世界にも鶏はいるのだろうか?
「うむ、バジリスクがほとんどじゃな。たまにワイバーンの卵も食べるぞ」
「へぇ バジリス……うをぉい? バジリスクっているの? 確かものすごい毒もっていると聞いたけど。それにワイバーンって……」
「うーむ 何せバジリスクは飼っておるからのぉ」
「飼う? いや、この場合常識を捨てるべきだ」
「バジリスク、出してみるか?」
フランがニヤリとする。
「止めて……あ、そろそろいいころだね。あとはパンをトーストしてコーヒーを入れよう」
バジリスクやワイバーンが存在するところはやはりすごいな。
でも、人間の世界に持ってこられるとエライことになるわ。
ベーコンエッグをフライパンから出して皿に盛り付けると、フランにトースターの使い方とコーヒーの淹れ方も説明した。
フランは興味津々の様子で見入っている。
「コーヒーとやら、いい匂いがするのぉ。腹が減ってきたわい」
「健康な証拠だよ。さ、できたよ。食べようか」
パシャンという音と共に、こんがりきつね色にトーストされたパンがトースターから飛び出る。
「おぉ! このような魔道具は初めて見たのじゃ」
フランは目を丸くしてトースターを見ている。
「魔法じゃないよ。人間が作った機械だよ」
「妾からすれば、ここにあるものは魔法よりもすごいものじゃて」
うーん、何かの本で『十分に発達した科学文明はもはや魔法と変わりない』と書いていたなあ。
「さて。食べようか」
「うむ」
するとフランは両手を組み
「魔族の王よ、今日の糧を与えてくれたことを感謝する」
俺は合掌し
「いただきます」
お互いの国の食事前の言葉が部屋に響く。
「このベーコンエッグというのはなかなか旨いの。パンもなかなかよいではないか」
「口に合ってよかった」
おいしそうに食べるフランを見てほっとする。
まさかこの部屋で、女の子と朝食を食べることができるなんて!
ああ、非モテの神様ありがとうございます!
朝食が終わり食器を台所の流しへ持っていくと
「よし、これは妾が洗うぞ。水道の使い方も分かったしの」
フランはそういうと食器を洗い始めた。
(ああ・・夢みたいだ・・)
「どわああ!」
キッチンからフランの大声が聞こえる。
「どうしたの?」
何事が起きたかとフランのもとに行くと、蛇口を開けすぎたらしく水が飛び散っていた。
「タオル持ってくるから。蛇口もう少し閉めてみて」
「すまぬの」
「気にしない気にしない!」
何とか食器を洗い終えると、フランのパジャマは水で結構濡れていた。
「エプロンも買いに行こうね」
「エプロンとは何ぞ?」
「料理とか洗いものとかをするときに服の汚れ防止につける布だよ」
「ふむ。まあ、見てみればわかるか」
「さて、出かける準備をしないとね。あ、フランの服……」
「とりあえず、着替えはあるのじゃ」
フランはディメンジョントランクから服を出し着替えようとする。
「ちょ……隣の部屋で着替えるからちょっと待ってくれ。また鼻血が出そうだ」
寝巻から着替えるために自分の服を持って隣の部屋に行く。
「着替えが終わったら言ってくれな」
「わかったのじゃ」
フランの着替えが終わり、部屋に戻ると、フランはビキニに小さな上着とミニスカート、ガードル付きの白いオーバーニーソックスとピンクのニーハイブーツという大きなお友達には色んな意味でドストライクの格好になっていた。
その上、角と尻尾がそのまま出ている。
「たのむ……フラン、その格好だと大騒ぎになる」
「何がじゃ?」
「角と尻尾、ビキニ姿はまずいよ」
「変なのか?」
「そうじゃなくて、ただでさえ可愛いのにそんな恰好して街を歩いたら、男どもが群がって騒ぎになる」
押し入れからパーカーを出して、フランに渡す。
「これを着てくれ。あと角は帽子で、尻尾は……くうう……隠せない」
「角と尻尾があるとまずいのか?」
「人間共にはそれがないんだ。秋葉原だったらコスプレでごまかせるが。他の所だと目立ちすぎる」
ふと、「人間共」と発してしまうが、もう悪魔の眷属になりつつあるのかも知れない。
「では隠そうぞ」
フランの角と尻尾がすっと消えた。
「え? どうやったの?」
「簡単じゃ、透明化の魔法じゃ。とはいっても光を曲げるだけじゃがの」
「光を曲げるって簡単に言うけど……」
「魔法じゃ」
フランは天地の真理を説くが如く話す。
「はい」
常識は捨てないといかん。
「時に、先ほど言うて居ったアケハバラやコスプレとは何ぞ?」
「アキハバラという地名でね、大八洲文化の特異点だよ。コスプレってのはね……」
フランにコスプレの意味を説明する。まぁ、オタク文化は大八洲発祥だが、それをもって大八洲文化とは言い過ぎかも知れない。
「ほう、そのような文化があるのか。大八洲はなかなか懐の深い国じゃの。わしもそのコスプレイヤァ? とかいうのをぜひ見てみたいものじゃ」
「メイドのコスプレイヤーならたくさんいるから、まずはそこからだ」
よく考えたら、生まれたての雛に間違ったことをインプリンティングするような真似をしているかも知れないと思いつつも、二人で駅へと向かい始める。
〜〜〜あとがき〜〜〜
この度は沢山の作品の中から拙作をお読み下さりありがとうございました。
もしよろしければフォロー、レビューをよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます