第092話 残念さんと神官戦士

  巨獣イビルボアを厨二チックな必殺技で仕留めて、ご満悦なフロレアル。

 そんなフロレアルは負傷者の治療へと向かうことなく、主意識の認知加速を解いてしまう。

 そして巨獣の遺骸へと近付くと、洗浄魔法を施すように見せかけつつ、並行して浄化魔法を施し始める。

 それを終えた後に魔法鞄へと触れながら巨大な遺骸を収納してしまうのだった──

 

 ──本来であれば人道的観点からケガ人の治療を優先すべきなのかもしれない。

 だけど、ここに居る放伐戦参加者たちへと、アタシが巨大フィアースボアを倒した事を知らしめる必要があるのだから仕方がない。

 そして何より大切なのが、いち早く浄化魔法で、余計な血液やら排泄物を処理した方が身肉しんにくが美味しくなるのだから、見ず知らずの冒険者の治療なんかより戦利品の処理を終える方が重要なのである。

 それに収納さえしてしまえば、アタシが取り出さない限りは、何人たりとも手出しはできなくなる。

 それなのに収納が可能なモノをわざわざ放置するなんて有り得ないことである。

 それをするのは余程のお人好しか、頭の中に脳みそ代わりにプリンでも詰まってる様な余程のお人好しおバカさんしか居ないと断言出来る。

 それに万が一治療が遅れて死んでしまったとしても蘇生魔法があるから大丈夫よ。

 ──だって、七つの龍珠を集めれば、どんな願いも叶うとの英雄譚でも『大丈夫だ、龍珠で生き返れる』との名言迷言があるくらいなのよ。

 だから、最終的に生きてさえいれば、例え途中でとしても、何の問題もない筈よ!

 ──さて、戦利品たる遺骸の浄化処理と収容を終えたことだし、金髪有り胸さんこと残念さんの所へと戻りますかね。

 平面探知と盗視聴で確認してるけど、負傷者の中で最も酷そうなのは、残念さんのところにいる盾タンクの男ね。

 なにせ治癒魔法を受け続けてるのに意識が戻らないどころか、何の反応も示してないから、かなり重篤だと思う。

 その次は哀・戦士へとジョブチェンジが確定した槍使いね。

 それにしても槍使いは何者なのかしら?手足が変な方を向いて複数箇所から骨が外に飛び出してるってのに芋虫みたいにいずっているわ⋯⋯。

 それに時折、カイコみたいに口から血反吐ちへどまで吐き出してるけど、この後に変体クラスチェンジして人族から卒業するのかしら?

 その他の寝たきりになってる負傷者も少なからず骨折とかは負ってそうだけど、見た感じだと命に別状はなさそうってところかしらね。

 そういえば治療魔法を施したら礼金とか謝金って貰えるのかしらね?──

 

 フロレアルは、そんな悠長なことを考えつつ、駆け足でカテジナとサヘランの元へと向かうのであった。


 一方のカテジナは、フロレアルからの指示を忠実に守り、サヘランに治癒魔法を施し続けていた。

 先の救援の折にカテジナは、フロレアルが保有するユニークスキル傾国の美貌により魅了されたことに加え、窮地に駆けつけ助けらるとのシチュエーション、その際に掛けられた言葉、それらの相乗効果で残念さんと化していた。

 だが、フロレアルとの出会いから時間が経ったのに加え、自分たちを苦しめていた化け物たる巨獣が討ち取られたことから、すっかり落ち着きを取り戻していた。

 そんなカテジナの元へとフロレアルが戻ってくる。


「──待たせたわね。約束通りデカいだけのフィアースボアは倒してきたわよ。えっと⋯⋯ザンネンさん?」

「──ザン・ネン・サンですか?⋯⋯フロレさま、申し訳ございませんが、それなるモノをワタクシは存じておりませんわ。お許しくださいませ──」

「⋯⋯そうだったわね。それは気にしなくていいわ。ところでアナタの名前を教えてくれるかしら?それと彼の状態はどうなのかも教えてちょうだい」

「ワタクシはカテジナと申しますわ。以後、お見知り置きくださいませ。それでサヘランですが、フロレさまからのご言いつけに従い神聖魔法のエクストラヒールを施し続けておりました──ですが、状態の改善は見受けられません⋯⋯このままですと、そう長くは持たないと思われますわ。⋯⋯フロレさま、白いメイスと白い装束をお召しになっているところから、高貴な神官戦士さまであるとお見受け致します。どうかお願いです、サヘランをお救下さいませ──」


 カテジナは自分が施していた治療魔法の説明と併せてサヘランの助命をフロレアルほと願いでる。

 その一方で、元から救える命は救おうと考えていたフロレアルは、別の事に反応していた。


──アタシが神官戦士ってどういう事かしら?

 そういえば、身に着けているのはショートとはいえ白いローブに白いマント、加えてメイス使いだったわね⋯⋯。

 その上、戦闘力が桁違いに高いともなれば、神官戦士と勘違いするのは無理もないことなのかしら?

 そういえば、白メイス君って長いこと教会の片隅で放置プレイされてた子だったわね⋯⋯。

 それに今更思い出して気付いたけど、アタシが白い衣装を好んで着るようになったのって、聖女認定されてからだったわ⋯⋯。

 村の人たちから勧められて、良く似合うと褒められたからだったけど教会関係者に仕立てる気満々で、きっと聖女には白い衣装が一番とか考えていたんだろうなぁ⋯⋯。

 まぁ、今更好みを変えるのは難しいし、身に付けてる白ショートローブと白マントのスタイルは、今後も変える気は無いけどね。

 ──それでも評価がダダ下がりでストップ安で底値に達している神殿関係者と勘違いされるのは、正直言って面白くない。

 だけど、ここで下手に否定してもややこしくなりそうだし、否定も肯定もせずにスルーして話しを進めるとしますかね──


 そう決めたアタシは神官戦士に関しては触れず、表情を変えることなく話を進め始めるのだった。


━━━━

 今回は、フロレアルとの絡みが多い残念さんことカテジナのキャライメージをリンク先にて掲載しておりますので本編含めて楽しんで頂ければ幸いです。

https://kakuyomu.jp/users/kunnecup1103/news/16818093077687482227


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