第090話 VS化け物:イビルボア

 討伐隊を壊滅にまで追い込んだ〝化け物〟たる巨獣イビルボア。

 その巨獣を死刑地へと移し終えた小さき〝バケモノ〟たるフロレアル。

 フロレアルは主意識の認識加速を解除し、周囲に残っている討伐隊の面々が確認出来る様にと化け物の元へと歩みを進める。

 一方のイビルボアも、白き衣をまとった人種ひとしゅの小さきメスが唐突に現れ、己へと何の歩み寄る様を目にしていた。

 その態度から、その白く小さき者こそが、己の一撃を受け止め、身動きすらも封じ、後方へと放り投げたバゲモノだと察するのだった──


 巨躯の化け物は、近付きくる小さきバケモノから視線を外すこと無く警戒を続けていた。

 これが叶ったのは、そのバケモノの容姿が判別できぬ時までであった。

 小さきバケモノの容姿を目にした瞬間、巨躯の化け物がいななくに併せて全速で駆け始める。

 対する小さきバケモノも認識加速を再開し、迎撃体制へと移行する。 

 ──巨獣の化け物が繰り出すは、己が誇る最大の武器である超重量を載せた高速の突進。

 その力を己が誇る巨躯の中で最も硬き頭部を用いて対象を弾き飛ばす必殺の一撃。

 ──小さきバケモノが繰り出すは、驚異的な硬さと不破壊性デュランダルを有する白き鈍器メイスに、己が持てる全ての力──人外の域に至りし筋力値と敏捷値が込められた必滅の一撃。

 対極の存在とも言い表せる〝巨躯の化け物〟と〝小さきバケモノ〟。

 対極の〝ばけもの〟が選んだ攻撃手段は、奇しくも己が力を相手へと直接叩き付けるとの類似したモノであった──


 化け物とバケモノの闘いは正に一瞬。

 バケモノの一撃殴打と化け物の一撃突進が真正面から激突する。

 その瞬間、どでかい〝ドシャッ!〟との液体物が爆ぜる音に併せて化け物の頭蓋は霧状に爆ぜ散る。

 その直後に真紅の満月が如き大輪の紅き華が宙に咲く──


 頭部を失った遺骸は信じ難い事に、その場で時が止まったかの様に佇みゆでいた。

 その首元からは失われた頭部へと血液を送り届けるために大量の血液が吹き出している。

 もう一方のバケモノは、いつの間にか巨大な遺骸の後方に静かに佇んでおり、その身に纏う装束は穢れなき純白が保たれていた──



~なぜなにシリエル先生

 巨獣イビルボアを討ち取ったフロレアルですが、その際の光景を目撃した討伐隊の証言が残されています。

 その内容は、まるで口裏を合わせた様に似通ったことを複数の討伐隊の面々が語っていたとも記されています。

 その証言の内容がこちらとなります。


 ──ありのまま、あの時起こったことを話すぜ⋯⋯。

 イビルボアは俺たちを蹂躙し終え、悠然と闊歩し鏖殺を始めようとしていた。

 俺たちは絶望し俯き震えながら死が訪れるのをただ待っていた。

 その時だった⋯⋯、唐突に硬質なモノ同士が衝突した音が響いたんだ。 そこには白い装束を身に付けた黒髪の少女がwいつの間にか現れていたんだ。

 そして気付いたら、巨獣は遙か後方へと飛ばされていたんだ⋯⋯。

 信じられないだろ⋯⋯、あの巨獣イビルボアが飛んだんだぜ⋯⋯。

 そして少女が巨獣へと近付き始めると巨獣が突然雄叫びを上げたんだ。

 その直後にドデカい音が鳴ったと思ったら、巨獣が頭部を失った状態に変わり果てていたんだ。

 その時に俺は確かに見たんだ⋯⋯、満月の様な真ん丸の深紅の華が宙に浮いてて、その傍らに巨獣の遺骸が静かに佇んでいたんだ⋯⋯。

 何を言っているのかわからねぇと思うが、俺も何が起きたのか一瞬過ぎてよくわからなかった⋯⋯。

 頭がどうにかなりそうだった⋯⋯。

 催眠術だとか魔法だとかそんなチャチなもんじゃぁ断じてねぇ。  もっと恐ろしいモノの片鱗を味わったぜ⋯⋯。

 だが、そのお陰で、俺たちは生き残ることができたんだ。



━━━━

 ご愛読頂きありがとうございました。

 楽しんで頂けましたら、作者の励みにもなりますので、フォローや応援などして頂けると幸いです。

 また、本作主人公フロレアルのキャラクターイメージを近況ノートに投稿しておりますので、よろしければイメージの参考にご覧下さい。

フロレアル(主人公)⑦

https://kakuyomu.jp/users/kunnecup1103/news/16818093077065621134

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る