第23話 非実在の美少女ネネッタちゃん
俺は、自分のスマホを見た。
そこには、新着メッセージ。
“ネネッタです。面白いレトロゲームを見つけたので、お裾分けします。ちなみに、違法コピーです”
日付を見たら、彼女が失踪する前だ。
「あいつ……。いい加減にしろよ?」
言いながらも、スマホの画面をさわる。
「
「え? どんな感じ?」
興味深そうに覗き込んできた
「お前は、見るな! どういう条件で失踪するのか、条件が不明だ」
不満そうな彼女を無視して、レトロゲームを起動する。
チープなBGMと、ドット絵による古いRPGの画面に……。
「どこかの町の中……。マップの一部がバグっているというか、真っ黒だ」
それはそれとして、最新の犠牲者の自宅へ向かう。
ズボンの前に突っ込むホルスターに拳銃を入れ、アウターで隠した短機関銃をスリングで吊っている。
屋内戦に特化した装備だ。
いっぽう、亜沙乃はいつもの小太刀を適当に差している。
他に、スローイングダガーを仕込んでいるとか。
念のために、小型のリボルバーも一丁。
俺はスマホのナビに切り替えて、ラシーヌ学園の犠牲者が住んでいた自宅へ。
そいつは一人暮らしだったらしく、マンションの一室だ。
治安が良いエリア。
カワサキ市の管理官による権限で、管理者からマスターキーを預かる。
亜沙乃が鍵を開けて、ドアを全開に。
俺は両手で構えているサブマシンガンを向けつつ、銃口の下にあるフラッシュライトで照らす。
締め切った空間に特有の臭いがするものの、死体の臭いはなし。
土足で踏み荒らしつつ、各部屋をクリアリング。
しょせんはマンションで、すぐに終わった。
「クリア……。電気をつけてくれ」
「はいはい」
何もしていない亜沙乃は、パチパチと各部屋のスイッチを押していく。
仕掛け爆弾はなく、普通に明かりがついた。
すると――
「落書き? 町を出るには、全員と話せ……。ゾンビ発生の原因を探れ」
クレヨンと思われる物体で、走り書き。
ちょっとしたホラーだ。
俺はしげしげと眺めている亜沙乃に構わず、マンションの部屋を見て回る。
「インスタント食品の空き袋、カップ麺……。ずっと引き篭もっていたのか……」
後ろに気配を感じたので、そちらに踏み込みつつ、自分の腰を起点にして相手を投げ捨てた。
短機関銃の銃口を向けるも――
「いない? 感触から女子小学生ぐらいで、いきなりの出現だから幽霊か?」
「え? 女子小学生を抱きたいの?」
ドン引きした亜沙乃に、警告する。
「敵だ! 少なくとも、人型! 見つけたら攻撃しろ」
「アイアイ」
スラッと小太刀を抜いた亜沙乃は、室内らしく引きつけた構えに。
すると、スマホからレトロゲームの音。
レトロゲームの画面にしたら、ドット絵のキャラ。
操作しているキャラで話しかけたら、聞き覚えのある声が響く。
『ネネッタです! どうやら、このゲームを開発したのは池袋にある会社のようですね? 危険な場所ですが、行ってみるしかないでしょう。ところで、町を出るためには周辺の探索を――』
レトロゲームを終了した俺は、目が点になっている亜沙乃に言う。
「どうやら、ネネッタは犠牲になったようだ! 残念だよ」
『まだ、生きていまーす!』
「とにかく、池袋に行くぞ」
「あ、うん……」
『失踪した人間は、このゲームに閉じ込められている感じです! こちらはNPC扱いで、内部を探索できないので!』
「いや、お前の本体は?」
『ううーん? たぶん、どっかに閉じ込められていると思います。ところで、私の下着は漁りました? こんなこともあろうかと、穴開きを――』
「池袋まで、装甲車で車列を組むか……。日が暮れる前に、とっととゲーム会社を調べよう」
「えっと……。そ、そうね!」
――池袋のゲーム会社
俺が投げ込んだフラッシュバンが、中で炸裂した。
光と音が漏れてきて、短機関銃を構えた俺が先頭で入る。
『ガアアッ!』
ゾンビみたいな人間が、襲ってきた。
パパパと胴体にヒットさせると、そいつは倒れる。
「良かった! 銃で死ぬぞ、こいつ」
「……明かりはつかないわ」
警戒しつつ、それぞれのライトで照らしての調査。
かなり小規模で、事務デスクが5つほど。
仕事用の端末とモニターが置かれているが、電源は入らず。
窓は閉じられ、内側でブラインドが下ろされたまま。
埃がひどく、数体のゾンビがいた。
比較的新しいメモによれば、このレトロゲームを完成させたいようだ。
近くに主犯らしき奴の自宅があるようだから、このまま突撃する。
「失踪者がどうなったか、だよなあ……」
「死体も見つかっていないから、自分で移動したか、誰かが攫ったか」
2人で推理しつつ、装甲車で戸建てのブロック塀をぶち壊して、そのまま玄関に突っ込んだ。
「初めまして!」
「……乱暴ね?」
言いながらも、装甲車のドアを開けて、左右で飛び出す。
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