第88話 委員会

 体育祭から数日が経った。

 明日から夏休みが始まり、今日は夏休み前最後の登校日である。


 加えて、委員会会議の日でもあった。


「――これより、前期最後の委員会会議を始めます。」


 委員会の代表たちが集まる教室の中。淀みない声音で言葉を発するのは、珍しく流暢に喋るオレだった。

 初めの声掛けだけはオレがやることになったのである。


 オレの仕事は書記。

 会議の内容を記録する事が普段の仕事だ。


 にも関わらず何故今回司会の挨拶をやっているのかと言えば、これまでの生徒会役員たちのやっていたことを思えば当然だ。


 だから何故今まで居なかった奴が今日に限って居るんだ…というような視線からは、流石に免れられなかったのも当然といえば当然だった。


 …というわけで。


「「「「「申し訳ありませんでした」」」」」


 生徒会役員たち5人が頭を下げた。

 そしてオレも彼らの背後で(念の為)頭を下げた。

 さながら我が子の過ちを謝る保護者の様…。


 円滑に事を進めるのならば、頭を下げるのも容易だ。彼ら5人を自分の力で戻すことが出来なかったのは事実だし。ホラーで脅s…訴えかけても戻らなかったのは、オレの力が及ばなかったからというのもある。


 委員会会議で気まずかったのもそのせいでもあった。

 なので自分も頭を下げた。


 ……とまぁそんな事を会議前に既に済ませてオレが開始の合図を出したわけだ。

 それからは副会長の天辺にやってもらい、オレは自分の仕事に専念する。


 え、これまで他のメンバーが居ない間どうしていたか?


 それはまぁ…力業?

 ……冗談だ。


 これまでは書記の仕事はもちろんのこと、生徒会からの報告事項を発言していたぐらいだ。意見を出す話し合いの際は免除して貰っていたのである。

 通常なら、司会も生徒会がやっていたのだが、他のメンバーが居なかったためにとうとうオレにお鉢が回ってきそうになったのだ。だが、流石に一人二役は負担が大きいのでやりたい役員の生徒にやってもらっていた。彼らが言うにはいい経験になったそう。優しい。


 そして今こうして始まりの言葉だけを話したのは、”最後の区切り”としてらしく、他にもつらつらと理由を述べられたが、要するにオレが話せば話は早いということだったので、とっとと済ませて話し合いの始まりだ。

 因みに最後の区切りというのは、今回の様なことが最初で最後であるという意味でもある。


 そんなわけで、この前よりも一人ではない分胃は痛くない。だが痛いことに変わりはない会議が始まった。


 知っているか?

 オレは妖力が多いからか胃薬要らずなんダゼ。


 …慣れない語彙は使うものじゃないね。恥ずかしい。


「では環境委員会からお願い致します。」

「はい」


 副会長が黒板の前で数枚の紙を持ちながら指名すると、環境委員会代表の生徒が席を立った。


 彼はオレからすると先輩に当たる人物である。


 名前は水城みずきあがり。

 何の末裔かは不明。


 オレが聞いていないから知らないとかではなく、キチンと聞いた上で分からないのである。色んな妖怪のミックス…と言っても、水辺の妖怪が大半を占めているらしく、泳ぐのが得意だそう。それに綺麗好きも相まって、環境委員会に入ったらしい。


 しかし何故ここまで把握しているのかというと、生徒会の面々が来なくなってから色々足りないな(何かが)…と思ったために、委員の長たちとコミュニケーションを取り、結束力を深めたのである。


 勿論他の委員とも面識を持った。


 …胃に更なる追い討ちを自らかけていたが、不安を無くすのには有効だったのだ。


 何気に自ら声をかけて人脈を広げるマネは初めてかもしれない。幼い頃から向こうから話しかけてくることがほとんどだったので無意識の内に甘えていたのだろう。


 事実どうやって話しかけていいのか分からなくなり、既によく話している風紀の皆々様に協力してもらって台本っぽいものが完成してしまった。


 それに問題は声掛けの仕方だけじゃない。

 オレの話し方も問題だった。


 途切れ途切れの話し方は我ながらイライラすることも…無いが。人によっては苛々してしまうものだろう。

 だがある程度慣れた相手や別枠として?…なのか、一種の変態の気がありそうな人物には普通に話すことは可能だった。

 我ながら本当にこの設定は要らないと思う、意味が分からない。


 そんな訳で相手がイライラする様子を見せたら撤退か手書きのメモを見せることで接触を図る方針となった。


 そんな時、手書きではなくちゃんと言葉を最後まで嫌な顔一つせずに聞いてくれたのが彼だった。

 正直大国先輩と会うよりも先に知り合いたかった人だと思う。(←失礼)


「――損害額は凡そ_十万。その殆どが国真大羅君が原因で始まり親衛隊の内数名が共謀して虐めを引き起こした被害です。後は不良達の喧嘩で出た被害、妖怪の力が暴走して器物損害になった合計額です。今月の報告事項は最後となります。質問があればどうぞ」


 普通の学生の委員会で話すことなのかは怪しいところだが、此処ではこれが普通だ。


 小・中と、委員長には携わってこなかったのでここにきて困惑したものだ。まぁ小・中と高校を比べるのが間違えているのだろうが。


 こうして委員会会議が始まった。



 まぁ結局は話の都合上省略することになるのだが…。(メタい)

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