感想を書きたい作品の選考にあたって

 応募された作家のみなさま、お騒がせしております。

 主催者である犀川よう様から頼まれました、『第一回 さいかわ卯月賞』から「感想を書きたい作品」を一作選ぶ際に不備がみつかったため、選考のやり直しを行います。誠に申し訳ありませんでした。


 ご承知のように、私には受賞作を選ぶ権限はありません。


 四月中旬、主催者である犀川よう様から近況ノートのコメント欄にて、『第一回 さいかわ卯月賞』から「感想を書きたい作品」を一作選ぶことお願いする文章が書かれていました。

 唐突にそんなことを、よく知らない方から頼まれて困惑し、当初は断るつもりでした。

 応募作品を幾つか拝読しまして、作品の良さから、読んでみたいと思いました。

 


 そもそも、私が感想を書くようになったのは、ストレスより活字が読めなくなったからです。

 悩んだ挙げ句、荒療治にと、カクヨム甲子園の作品を読んだのがはじまりです。

 やる気と情熱に満ちた高校生の作品ならば、また読めるようになるかもしれない、とすがったのです。

 本当に読めなかったので、音声読み上げソフトを活用し、耳で聞きながら、目で文字を追っていくやり方を地道に行いました。

 その過程で、感想を書いていました。

 数年かけて、ようやく活字が読めるようになった次第です。



 私はこれまで、選考をしたことがありません。

 大いに悩み、一般の選考で行われているやり方を参考にしましたが、私の不手際により不備が見つかり、やり直すことなりました。


 どんな選考においても、与えられたテーマと主催者側のカラーに合っているのかが大切となります。

 主催者である犀川よう様が、どのような作品を求められているかは、わかりません。

『第一回 さいかわ卯月賞』とあるように、一回目です。

 参考にできるものがなく、『さいかわ卯月賞』のレーベルカラーもわからないため、広く万人受けする作品を選ぶしかありません。

 そうなりますと、現代ドラマか恋愛ものから、一般受けする作品を選ぶことになります。

 

 ご存知のように、選考は一作以外を落とすことです。

 はたして、一般受けする作品を選んでよいものなのか。


 ポプラ社小説新人賞では、一次選考から編集者がすべての原稿に目を通し、二次選考以降は選考ごとに一つの原稿を複数人が読み、審査をしているそうです。

 なぜならば、輝く才能を見落としたくないと恐れているからです。

 書き手同様、読み手も全力で読んで、選考会を行っているのです。

 

 作者が作品を作るときの苦労を体験しているので、少しはわかります。寸暇を惜しんで書き上げたときには、心身ともに疲弊しきっているものです。

 こちらも同等か、それ以上のことを、一作ごとに費やすのが礼儀というもの。


 やり直すに当たり、感想を書くための基準で選ぶべき、と考えを改めました。

 応募された六十六作品を、各ジャンルごとに分類します。

 恋愛以外のジャンルにも、恋愛の構造で書かれた作品が多数ありますが、作品の世界観で六つにわけました。



・現代ドラマ   二十六作品 

・恋愛      十四作品 

・ファンタジー  九作品

・ホラー     七作品

・時代もの    五作品

・SF      四作品



 ミステリーはありませんでした。

 各ジャンルの中から、一作ずつ、作品を選びます。

 基準は二つ。



一、テーマ「春」を描いているか

二、面白いか



 カクヨム甲子園で大賞を取られた子が編集から、共感を重要視している旨をきいた、と話をされていたのを思い出しました。 

 ご存知のように、共感は「他者の気持ちの理解と同情」を、感情移入は「作品世界への没入と自己投影」を指します。

 創作でいわれる共感は、主人公と読者をくっつける接着剤のような役割を果たしています。

 読者が主人公の気持ちに寄り添い、自分と重ね合わせることができれば、より深い感情移入ができます。

 読者の関心を引き付け、主人公との絆を強め、物語に没頭できる作品だからこそ、読者に面白さが伝わるのです。



 各ジャンルごとに分けた後、ジャンル内でも、似たような題材を扱ったものに選り分けてから応募作品を読みくらべ、そのジャンルの中でテーマ「春」を描きながら面白い作品を、一作ずつ選んでいきたいと思います。

 

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