第19話
「ハイル爺さんが一緒なら大丈夫……か?」
「ライリーも一緒なら尚更だね」
うんうんとアントンさんとエルンストさんが頷きあう。いやおじいちゃんと一緒にいられるのは嬉しいんだけれど、さっきまでの攻防は何だったの? あんなに必死に抵抗していたのが馬鹿みたいじゃん!
心の中でふたりにブツブツと文句を言っていたら、黙って話を聞いていたロバートさんが口を開いた。
「俺は反対ですよ! こんな子供を連れて行くなんて!」
ビシッとロバートさんに指をさされながら言われる。人に指をさしちゃいけませんって習わなかったの? ……異世界だからそんな決まりはないかもしれないな。
「ロバート、人に指をさしてはいけないよ」
エルンストさんが注意をする。この世界でもダメだったんだ?
「すみません……」
ロバートさんが指さしていた腕を下げる。なんかしぶしぶって感じだな。失礼な!
「そもそも連れて行ってもいいか許可が必要でしょう。まあ、普通の一般人ですし? 子供ですし? 却下されると思いますけれどね!」
ツーンとした感じでロバートさんが言う。子供子供ってうるさいけれど仕方がない。だって、私が子供なのは事実だから!
「俺が話を通そう。今の団長とは古い付き合いだしな」
「爺さんが説得をするなら大丈夫だろうな。俺たちも呼ばれているみたいだし、一緒に行く」
「そうだね。早くしないと町の人たちが張った結界石の効果が切れてしまうかもしれないしね」
遅くなったのは無駄な問答があったからな気がするな。私は!
「そんじゃ、さっそく団長の所に行くか」
「そうだね」
真面目な顔つきになるふたり。
「しばらく会っていないからな。会うのが楽しみだ」
目元と口元を綻ばせるおじいちゃん。
「案内しますね!」
後輩らしいビシッとした感じのロバートさん。あれ?
「もしかして私、お留守番? ライリーと」
大丈夫かな? おじいちゃんがいなくて。
「団長もライリーに会いたいと思いますよ。連れて行っては?」
「それだと私がひとりになっちゃうから!」
ひとり怖い! ひとりダメ絶対!
「貴方より小さい女子供でもひとりで留守番ができますよ? 少しの間なんですから我慢してください」
「ぐぬぬ〜っ」
なんかロバートさん、私に当たりが強い気がするのは気のせいかなぁ? 刺々しいというか何というか。私が何をしたっていうんだ!
「ライリーは置いて行こう。嬢ちゃんをひとりにはできんしな」
「ありがとう! おじいちゃん!」
欲を言えばおじいちゃんにも残って欲しいけれど、相棒のライリーがいるってことはここに帰ってくるってことだよね!
「ライリー、一緒にお留守番よろしくね!」
「ブルッ!」
「わ〜っ、ライリーありがとうっ!」
今のは絶対肯定の鳴き声だったよね?! ライリーって人の言葉が分かるの? 凄〜いっ! 流石おじいちゃんの相棒だね! おじいちゃんと少しでも離れることになって不安じゃないっていえば嘘だけれど、相棒のライリーが一緒なら我慢できそう。
「それじゃあ、行こうか?」
「ああ。お嬢ちゃん、爺さんがいないからって勝手に暴走魔野菜の所に行っちゃダメだからな」
「行きませんよ! 勝手になんて」
アントンさんに指でビシッとさされながら言われる。だから……
「人に指をさすんじゃないっ!」
スパーンッ!
「あいたっ!」
「あちゃー」
アントンさんがエルンストさんに叩かれた。さっきロバートさんが注意されていたでしょう? 流石似た者従兄弟だなぁ。外見だけではなくて中身も似ているなんてね。
「お前たち、何をしているんだ。さっさと行くぞ」
おじいちゃんが呆れた顔で言う。
「おじいちゃんいってらっしゃい! はやく用事を済ませてきてね?」
「ああ、ライリーと一緒に待っててくれ。長居はしないつもりだからすぐ戻るぞ。ライリーも少しの間嬢ちゃんのことをよろしくな?」
「ヒヒンッ!」
凄い。やっぱりライリーって人の言葉が分かるんだ! 賢いね。
パタンッ! ゾロゾロゾロ
……団長さんの所にみんな行ってしまった。ひとりじゃないよ! ライリーが一緒だもん! だからボッチじゃないからね? みんなが帰ってくるまでライリーとお話しよ〜っと。
「ライリー、おじいちゃんたち行っちゃったね。今更だけれど団長さんって何の団長さんなんだろうねぇ〜?」
「閣下の連れなのにそんなことも知らないのか?」
「知らないよ〜? 教えてもらっていないし。何かの団体かなぁ? 何だろう?」
「……騎士団だ」
「へえ〜。騎士団か〜、ってことは騎士団長さんに会いに行ったのかな? アントンさんたちは騎士団に所属しているの?」
「そうだ」
「なんか凄いね。 後、ライリーってば物知りだね!」
「俺はライリーじゃねえよっ!」
「あれっ?!」
私の言葉に返事をしてくれて疑問にも答えてくれるなんて、凄い馬だなって思っていたら違ったよ。人語が話せるなんて流石異世界だなって思ったのに!
「ロバートさん? おじいちゃんたちと一緒に行ったんじゃなかったの? もしかして置いていかれちゃったの?」
「違う。 閣下にお前と一緒に留守番をするように言われただけだ」
「あっそうですか」
ロバートさんが何で俺が子供の面倒をとか閣下は自由すぎるとかごちゃごちゃ文句を言っているな、小声で。口調もおじいちゃんたちがいた時と比べて悪くなっている気がするな!
おじいちゃん〜、せめてアントンさんかエルンストさんのどちらかにするっていう選択肢はなかったの?
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