四級受呪者の前日譚

望月苔海

眼鏡割りのアイラ

第0話 本と魔法は使いよう

※これは、物語の少し先――

 少女が初めて怒りを覚え、友達のために立ち上がったときのこと。


*****


 魔法――。

 私たちがこれから学ぶ魔法。

 試験に向けて必死に覚えた魔法。

 夢のために必要な魔法。

 レオンハルトが教鞭をとり――サイサリスや、パルマージや、カーリマンが一番を追い求める魔法。


 不思議で、きらきらしていて。

 たしかに呪いは怖いけれど……。

 きっとその力で、人々を豊かにすると言われている――魔法。


 それが、単なる嫌がらせに使われているという事実は、アイラの胸に、重くのしかかった。


「……信じられない……」


 そしてその重みが、アイラの胸の奥でくすぶっていた火を大いに燃え上がらせた。


「……シャル、私は怒ったよ」


 アイラはすっくと立ち上がり、そこから見えていた学院内の時計塔を睨むように見据えた。


「シャルが我慢することなんて、何にもないんだからね。私が絶対、なんとかする」


 そして未だ腰掛けたままのシャルロッテに振り返ると、眼差しは強いままに、しかし頬は和らげて、こう提案した。


「シャル、図書館へ行こう!」


「……図書館?」


 シャルロッテはぽかんとしながらアイラを見上げたが、アイラはさも当然という体で、力強く頷いた。


「困ったときは図書館だよ。図書館には、なんでもあるからね」


*****


 これは、本の力を信じた少女が、呪いを抱えて歩き出す――

 その前夜に起こった、友達の「始まり」を取り戻す物語。

 その想いに至るまでの、アイラの「始まり」を、どうか見届けてください。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る