第51話 協会無能すぎワロタ



「襲撃者がいたのに,協会で対応してくれないなんて」


「そういうことができると困る連中がいるかのしれないわね。不自然にこうも動きがないと」


「物騒なことを言いますね。ダンジョンにはあんなのがウヨウヨしてるってことですか」


「ウヨウヨまでは行かないけど。あれの襲撃はもう3度目だからね。知り合いが二人殺されたわ」


「二人死んでも警察も動かないし、ニュースにもならないんですか?」


「ダンジョンで人が死ぬのは珍しいことではないし,二人とも事故に見せかけられて殺されているから」


 事故に見せかけられて殺されるというのは例の転移罠付近でチャラ男達が押されたという件と同じような状態か。

 そういえばあの殺人鬼も直接手を下したくないと言っていたな。

 どういう理由かは知らないが,証拠を残さないというのは厄介なことこの上ないな。


「実はここにもあいつがいるかも知れないからきたの。ここでも罠による死亡事故が多発し始めてたから」


「危険ですよ。気持ちはわからないですが,あれには近寄らない方でいいです。得体も知れない上に,確実に人を害してやろうという悪意を持っているんですから」


「ありがとう。君には助けられたし,感謝してるけどそれはできそうにない。あいつを消さない限り,これからあいつの陰に怯えることになるし,二人を奪われた恨み辛みが行き場を求めているから」


 そう言われれば,なんの言葉を重ねようとも綾美先輩の決心を揺るがすことができないのはわかった。

 言えば言うほど殺人鬼を思い出されて,決心が固くなるだけだ。

 彼女自体はこのままにするしかないが,殺人鬼に人が始末されるとわかってて見過ごすのも気分が悪い。


「これも全部殺人鬼が悪い。付き合いましょう。あなたのためじゃなくて俺のために」


「付き合うって何を言ってるの? 危険だとわかってるんでしょう?」


「俺は危険よりも自分の感情を取ります。命の危険は瞬間的にやばいことになりますが感情は永続的やばいことになりますからね」


「そういうスタンスなのに,私にはなぜ危険を避けるように言うの?」


「俺が嫌だからです。人がひどい目に遭うのは胸糞が悪いですけど,自分を見ることはできないから自分はどうでもいいですしね」


「筋は通っているようで,めちゃくちゃだね。君は」


「誰のせいでめちゃくちゃになってるのか。よく考えてもらいたいですね」


「こ,後輩のくせに生意気!」


「とりあえず,明日からよろしくお願いしますね。先輩」


「む,無視するな!」


 しばらくは綾美先輩と行動を共にするか。

 周りの人間が巻き込まれるかもしれないことを考えるとここで殺人鬼を打つことは必要なことでもあるしな。


  ───


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