第16話 裏ダンジョン


 入り口からダンジョン内に入り、ロボットに戻ったバビロンに乗って中に進んでいくとぞろぞろと攻略者や配信者たちがいるのが見えた。

 ダンジョン配信を暇な時に見るくらいの俺でも知っているレベルの有名人がゴロゴロいる。


「な、なんだこいつ!?」


 すごいところだなと思っているとその中の一人がこちらを見上げて叫び声を上げた。

 たまにニュースとかで見る人だ。

 確か名前は芹沢だったか。


「あ! 切り抜きで見たロボットだ!」「心強いなこりゃ……」「動画のよりデカくない」


 準備運動をしたり、ドローンを調整していた人たちが一斉にこちらを向いて反応を見せ始めた。

 初対面の人には毎度驚かれるな。

 注目も集めたことだし、ついでに自己紹介でもするか。


「始めまして、天野善斗です」


「……人なんだな。芹沢脩だ。俺が名前聞いたことがないってことは新人だろ。俺たちが先行するから後ろからついてこい」


 デバガメしにきただけなのだが、攻略隊に組み込まれてしまった。

 まあとてもではないがデバガメに来ましたなど言えるような感じではないしついていくか。

 後ろについていくだけでいいならそこまで危険はなさそうだし。


「皆好き好きで来ただけなのに即興で攻略隊なんて組んじゃって堅苦しくて嫌になちゃうね。ロボット君」


 後ろからついて行くと配信者の一人──みなぽんが話しかけてきた。

 働くことをボロカスに批判して、ダンジョン配信で金を稼ぐことを喧伝する思想濃いめの有名ダンジョン配信者で俺も少なからず見てる人だ

 すげえ、40過ぎだって言うのにリアルで見ても女児にしか見えない。


「元々じゃなくて即興だったんですね。言葉の感じから最初から組んでいるかと思ってました。確かに休みの日なんで緩くやってほしくはありますけど」


「そうよ。これだから企業所属はねえ。配信せずに働いているからあんなカチコチに……」


「みなぽんさん。天野君が困ってますよ。思想を押し付けるのは関心しませんね」


 配信で炸裂する企業ディスが始まるかと思うとメガネを掛けたOL──デスマRがみなぽんを諌めた。

 社畜の傍らダンジョンで迷惑配信者を血祭りに挙げている正義の女性配信者だ。

 こう、数珠つなぎに有名人が俺の近くに来て話しかけてくるとにわかには現実とは思えなくなるな。


「何よ? あたしのどこら辺が悪いのよ?」


「全てです」


「あんた!!」


 ・今日のターゲットが決定したな

 ・未知のダンジョン入る前に本編始まって草

 ・大人の醜い争いを見せられてロボット君ドン引きで草


「昨日の攻略分のところまで着いたな。桐原やってくれ」


 デスマRのドローンからコメントが読み上げられ、夢見心地の俺も雰囲気からこれは流石にヤバくないかと俺が思うと、昨日の最終到達地点であるモンスターハウス内で桐原と言われた攻略者のスキルによって壁の一部が光り始めた。


「隠し扉発見。破壊する」


 壁の破砕音によって一触即発状態だった二人も動きを止めると、バビロンの目線ほどの位置に赤い瞳が二つ破壊された壁の暗闇の向こうから見えた。


「大も──」


「グオオオオオオオオ!!」


 壁を破壊した芹沢が注意を飛ばそうとするが、爆音で咆哮を上げられ、膝をついた。

 体を痙攣させるだけで、動けていない。

 なんか麻痺ってないかあの人。

 俺の危惧を他所に暗闇から拳を振り被って髪の毛を王冠のように逆だったせた超巨大ゴブリンが出てきた。


「やめろ!」


 咄嗟に拳を巨大ゴブリンに向けて繰り出すと、超巨大ゴブリンが吹き飛んだ。


「ゴバアアアアア!!」

 

 空中で体勢を立て直し着地すると超巨大ゴブリンが怒号をあげてこちらを睨んだ。



  ────


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