第29話


『誰?ダレ?だぁれ?あはははっ、私、ほんと


「___刻戻ッ!」


「分かっとるわ、カンザキッ」


『あははははっっ、ざぁんねん!私、ここでぇす!ここ!ココ!』


刻戻が実と名乗った怪異にキック___


しようとするが華麗にかわされてしまった。


実?ほんと?


聞いたことねぇな___、新種か?


『私ね、本当にしちゃう!なんでも!すべて!ぜんぶ!』


『空虚な嘘でも現実に!世界が終わるなら終わらせちゃう!』


『だって、そっちの方がタノシイもんね?』


『ウレシイもんね??』


『誰も彼も、全全全部!』


『そっちの方が、疑い合わなくて済むね!』


『疑心暗鬼にならなくて済むね!』


高笑いのように、言葉を紡ぐ実。


狂ったように。


漆黒で純白な実が、狂ったように笑う。


世界を、嘲笑う。


「どうやら笑い上戸みてぇだなあ?!実さんよぉ?!」


『あはははっ、ふは、あははっっ。そう、ソウ!私、ワタシ!!』


『私が本当を司る怪異!噂だってなんだって捏造しちゃうの!!』


『でもそれも本当になっちゃうんだもん、捏造なんかじゃないよねぇ!』


「ッチ、これも効かねえのかよ」


全力を込めて実の腹らしき所にパンチをかましたものの、


相手には効かなかったらしい。


というか、殴った感覚すらない。


まるで、空気を殴ったかのような虚無感しか残らない。


「おい、カンザキ!猫のやつを呼ばんのか?!」


「アイツはダメだ!生身っつーか人間っつーか___」


「いや、何を言っとるんじゃ、お主は___」


「は?いやいや、ミヤは人間だろって」



「いや、猫の坊主は『怪異』じゃぞ。とっくの昔に怪異になっとるわい」



***


ドン、ドン…とどこかから聞こえてくる轟音に、


驚いて顔を起こす。


「何処かで戦闘…?なわけないか」


「なわけあるよ。加勢にでも行ってきたら?」


ほい、といつもの制服を投げられる。


何故か彼女の目は冴えていて、


今にも襲ってきそうだ。


「分かった、じゃあ行ってくる。」


「うん。気をつけていっといで」


***


『ほぉら、来た!キタ!女が来た!』


「な…、月見さん?!」


「えっと…。扇くんと仲いい人?」


「神崎ね!神崎!ほら、同じクラスの!」


「ああ、そう。神崎くん、大丈夫?」


「これが大丈夫に見える?!」


「まあ」


「そうか!アンタどんだけ強いんだよ!」


「え…、まあ____」




「それなりには、強いけど?」




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