第25話


「あたしは、誉疵弓弦葉ほまれきずゆずりは!あんたは?」


「えっと…、月見。よろしくね」


「いやいや、ファーストネームを教えてよ!呼びにくいじゃん」


「……猫狐。ねここだよ」


「ふんふん、ネココちゃんね!分かった!」


緑の瞳をした彼女は、


夏ノ瀬さんの助手らしい。


相棒でもあるらしいけど。


「ホコリん、どう?」


「んー、今日は調子悪いなあー。ちょっと待ってねー。」


「おけおけ。ネココちゃんは時間とか大丈夫そ?」


「うん、大丈夫…だと思う」


「あはは、なにそれー__。そうだ、ネココちゃんは知ってる?」


「え、何を?」


「最近噂になってるやつ!ほら、アイドルのSHOとSHUが__」


アイドルかあ…


ちょっとアイドルは分かんないなあ…。


「よし、おっけーだよー!やろっか、ツキミちゃんー!」


「あ、はい」


「今日のツキミちゃんはね___」




「赤!!!」




***


現在、深夜。


このくらいの時間を丑三つ時というのだろうが、


まあそのあたりはよくわからない。


なんだかうまく寝付けなかったので、


ちょっと散歩中である。


と。


「あれ、月見さん?」


「え、扇くん?」


ばったりと、扇くんと会ってしまった。


え、なんで扇くんもこの時間外に出ているの?


「えっと…、どうしたの?月見さん」


「いやいや、扇くんこそ。なんでこんな時間に?」


「あはは、それはお互い様でしょー?」


「まあ…。そうだ、扇くんは知ってる?夏ノ瀬さんのこと」


「あー、ホコリさんのこと?知ってるよー」


「ホコリさん呼びなんだ…」


「僕も何回かみてもらったことがあるよ。面白いよねー」


「うん、私も。今日、みてもらったんだ」


「へえ?どうだったの?」


「赤、だって。今のところ何もないんだけど…」


「きっと、この後何かあるのかもよ?一緒に散歩する?」


「……じゃあご一緒させてもらおうかな」


そうして、私たちは歩き出した。


まあゆっくりだし、話し声も迷惑にならない程度の大きさで。


「というか、扇くんは家の人とか怒らない?大丈夫?」


「あー、うん。僕は大丈夫。お父さんもまだ帰ってこないだろうし」


「そっか」


二人で、暗闇を歩く。


あまり街灯もついていなくて、


深夜なこともあり、なんだか不気味だ。


「そういえば、アイドルのSHOとSHUって知ってる?」


「あー、誉疵さんが言ってた。何かあったの?」


「うん。事故にあっちゃって、今意識不明の重体なの」


「よく知ってるね…、ファンだったりする?」


「ううん、お姉ちゃんが好きなの。ガチのファン」


「ガチなんだ…」


「HARUは大変だよね。一気にメンバーが二人もいなくなっちゃって__」


「三人グループなの?」


「うん。音楽共同体ギュラリティってグループだよ」


「へえ…、まあ知ってもどうかするとかはないけど」


「ないんだ、」


久し振りに扇くんと話したような気がする。


話が合う友達は少ないから、


こうやって話すのは久し振りなのかもしれない。


「……」


「……」


と。


私たちの前には、


何かよく分からないものがいた。


否、怪異だ。



「こんばんは、だね。キミがツキミちゃんかな、だね?」


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