第18話


「もぐもぐ」


「もぐもぐって普通口で言わなくないですか?」


「言葉にしないと分かんないよ?」


「小説への配慮でしたか!」


今は昼休憩。


誰もいない屋上で、二人でご飯を食べている。


もちろん僕は、パンが好きなので


パンを食べている。


おいしい!


「いや~、それにしても____」


「どうしました?」


「___ううん、なんでもないっ!」


そよそよと吹く風が、


二人だけで食べるご飯が、


二人しかいない屋上が、


心地よいと感じる。


「いつもは二人で食べてるんですけど__」


「え?今日は?」


「今日は休みみたいで…」


どんな人だろう。


「どうしてだろう、いつも休むことなんてないのに」


「ふーん、厚い信頼だね、親友?」


「はい、幼なじみで…」


そう言う彼の顔は緩んでいた。


今までの彼の顔と違う、


始めて見せてくれた、優しい本音のような顔。


「刻戻のせいだって分かってるんです、こんな仮初めの日常」


でも、分かっていても、辛くても手放したくない…


と彼は付け足した。


「僕の未練のある時間はここかもしれません。もっとうまくやれてたらって」


「うまくやれてたらってどういうこと?」


「ある事をやってみせたんです。ある一人の生徒に」


、と彼。


軽く、ふわりと微笑んだ仮初めの嘘の笑顔で、


彼は、正体を明かした。



「僕、幽霊なんです」



***


「んー…、見覚えしかない」


ある教室に入った僕は、黒板の落書きを眺める。


罵詈雑言で溢れた、黒板を。


「にしても、幽霊か…。幽霊、ユウレイ…」


「儂を呼んだのか」


「う゛わぁっ?!」


突然僕の前に現れたのは一人の少女。


ふわふわとしたうねりにうねった髪に、


痺れるような金色の瞳。


「えっと…、誰?」


「儂は刻戻。元凶じゃ」


「自分で言うんだ…」


「お主の未練があるところを『見て』やろう。どれ…」


***


「ここかのう」


「ここは…」


目の前には、一匹の白い猫。


紛れもない。去り猫だ。


***


「それともここか?」


「どこ…だっけ」


いや、ここは月見さんちだ。


そうだ、あそこで___


***


「ここか?」


***


「ここか?」


***


***


「ここか?」


***


「ここか?」


***


***


「ここか?」


***


「ここか?」


***


「ここか?」


***


「ここか?」


***


「ここか?」


***


「ここか?」


***


「それとも____ここかのう」


「っあ…」


見覚えがある。


さっきまでいた場所だ。


そうだ、僕は。


中学生の時、親友を。


たった一人の親友を_____

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