第6話
まあ、結局どういうことか分からないまま、
リビングに布団を敷いて二人で寝た。
…一人と一匹かもしれないが。
まあ、特段何かあるわけでもなく、
自分は普通に寝た。
ただ、彼女は、
「もうちょっと起きておくよ」
と言って、目を開けていた。
理由とかは、聞かなかった。
多分、昨日のやつだろう。
そう思って、瞼を閉じた。
***
『にゃは、起きてたんだ。お前』
「当たり前でしょ、去り猫さん」
両者、どちらも動かず、
虚無の空気が流れる。
『あいつとお前、別に血繋がってないんだろ』
猫は鼻も利くんだぜ、と去り猫。
純白色の毛を逆立たせて、朱色の目を光らせて、
大きな威圧感を出している。
まあそんなのにビビる私ではないし、
こんな低級怪異、塵でもないんだけど、
後ろにはすやすやと寝ているねここがいて。
この家の周りにも別の人間がいて。
そういう人達を、傷つけたくない。
見られたくもない。
「お前…野良妖怪?妖界生まれじゃあないよね」
『そうだにゃ、俺は野良。野良猫にゃ。』
大きな牙を見せつけて、のっしのっしと歩いてくる。
熊と同じくらいに大きい、その体で。
大きな、巨大な腕を振って。
それと同時に、私は手を出して。
____最初に聞こえたのは、去り猫の悲鳴だった。
「にゃああああああああああああああああ!!!』
人間の声、そして猫の声が同時に聞こえて。
『お前、お前…何をした!何をした!』
「ん、即死は逃しちゃったか。」
『ああああああああああああああああ!!!!』
おおきな猫は、額を抑えて、じたばたともがく。
妖術である。
妖術、〔温和な穏和な微弱な狐毒〕
遅効性の毒であり、即死をもたらす。
激痛が、脳を、内臓を、心臓を襲う術。
『俺が、死んで、たま、るかああああああ!!!』
にゃああああああ、と。
青色の妖気を纏わせて。
大きな猫は、もがく。
もがく、もがく、もがく、もがく。
「……あ」
『にゃはは、はは、はははははは!!!』
と思ったら、笑い出して。
『よく考えたら、こっちの方が動きやすいにゃ!』
そう言った猫は、変幻を解き…
いや、変幻して、人間の体になった。
『こっちの方が、消費は早いけど…まあいいにゃ』
この人間の体が死ぬだけだし、と猫。
右目は蒼、左目は朱の奇怪な瞳をして。
思いっきり、ねここに飛びかかったと思った。
が。
額から、朱の炎が吹き出し、
その場に膝から崩れた。
「……あ、つき、み、さ……ん」
ごめんね、と一瞬声が聞こえて。
ねここは、いいよ。と応えた。
***
正直、どこから起きていたのかと言うと、
去り猫が笑った時くらいからは、はっきりと意識があった。
「おっと、人間に意識が戻っちゃったか。」
ぼっ、と。
扇くんの額から炎が吹き出て、消えた。
「多分、まだ痛むと思うから…。ねここ、よろしくね」
「え、何を?看病は無理だと思うけど」
「話、聞いてあげてねってこと。」
ちょっと出掛ける、と言い、
彼女は家から出て行った。
「……何を話せっていうの…」
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