バスケに行こう
話し合いが一段落すると「またモノマネを見せてくれよ?」と、ライアンが雄大に頼んできた。
昨日みんなにウケたのもあり、今日は乗り気だ。彼はすぐに誰のモノマネをするか考え始めた。
(昨日はケイギさんのモノマネだったから、今日は……)
色々と考えて、ベリルのモノマネをすることに決めた。
『ベリル』は、雄大たち異世界者をA棟まで護送してくれた、中年の横柄なエドラド兵だ。
雄大は、まずみんなに普通に会話をしてもらった。それで適当なタイミングで「この野郎!」とぶち切れて、前に出ようとする。
たったそれだけのモノマネだが、これが結構ウケた。何回か繰り返してるうちに、小松がジストのモノマネをしながら止めてくれた。
『ジスト』は、ベリルの部下の若い男性エドラド兵だ。
(意外と小松はモノマネの才能があるのかもしれない)
「だからお前ら静かにしろって!」
後ろから怒鳴り声が聞こえた。
見ると、隣室のジェフが立っていた。
「またあんたかよ……」と、ライアンは顔をしかめた。
「あんたかよじゃねぇよ。オレっちは一応お前らの先輩だぞ」
ジェフが言い返した。
「何で今日も家に居るんだよ。訓練行けよな」
「たまたま連休なんだよ! とにかくオレっちを寝かせさせてくれ!」
彼は迷惑そうに言った。
■
「よお、元気?」
ジェフと話をしている時、部屋の前を通りがかったリタに声をかけられた。
バスケットボールを持ったビンと、知らないショートカットの白人女性も居る。
「分かったか! とにかくお前らはし…」
急にジェフが話すのを止めた。
彼の顔は、なぜか紅潮している。
「うちら今からバスケをやりに行くんだけど、あんたらも一緒にどうだい?」
と、リタが誘ってきた。
(バスケか。良いな)
学生時代にバスケ部だった雄大には、魅力的な提案だった。
「おっ、楽しそうだな!」
ライアンは前のめりだ。
「昨日たまたま良い公園を見つけてね。先にやっていた奴らが居たから、仲間に入れてもらったんだ!」
リタが嬉しそうに教えてくれた。
小松もディエゴも意外と乗り気だし、雄大も久しぶりに体を動かしたかった。
というわけで、流れで4人ともバスケに参加することになったのだ。
「そうだ、連れを紹介しておくよ。こいつはビン。こないだ目立ってたから、知ってる奴もいるかもな」
とリタがビンのおでこをちょんと小突いた。
ビンはよろけながら、「よろしくな」と、微笑んだ。
ライアンが、「ああ、あの逃げようとしてた奴か」と言うと、
「それはあんまり言わないでくれよな」と、恥ずかしそうにした。
「で、この娘はエレナ。隣りの部屋の飲んだくれだよ」
リタが
「飲んだくれは余計だよ〜」
エレナは、勘弁してよという表情を浮かべた。
そのあと彼女はこっちに向き直り「まぁ、よろしくね」と、みんなに挨拶した。
A-12号室の面々も、それぞれリタたちに自己紹介をして、それが終わると部屋を出た。
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