バスケに行こう


 話し合いが一段落すると「またモノマネを見せてくれよ?」と、ライアンが雄大に頼んできた。


 昨日みんなにウケたのもあり、今日は乗り気だ。彼はすぐに誰のモノマネをするか考え始めた。


(昨日はケイギさんのモノマネだったから、今日は……)


 

 色々と考えて、ベリルのモノマネをすることに決めた。


 『ベリル』は、雄大たち異世界者をA棟まで護送してくれた、中年の横柄なエドラド兵だ。


 雄大は、まずみんなに普通に会話をしてもらった。それで適当なタイミングで「この野郎!」とぶち切れて、前に出ようとする。


 たったそれだけのモノマネだが、これが結構ウケた。何回か繰り返してるうちに、小松がジストのモノマネをしながら止めてくれた。


 『ジスト』は、ベリルの部下の若い男性エドラド兵だ。


(意外と小松はモノマネの才能があるのかもしれない)




「だからお前ら静かにしろって!」


 後ろから怒鳴り声が聞こえた。

 

 見ると、隣室のジェフが立っていた。


「またあんたかよ……」と、ライアンは顔をしかめた。


「あんたかよじゃねぇよ。オレっちは一応お前らの先輩だぞ」


 ジェフが言い返した。


「何で今日も家に居るんだよ。訓練行けよな」


「たまたま連休なんだよ! とにかくオレっちを寝かせさせてくれ!」


 彼は迷惑そうに言った。



「よお、元気?」


 ジェフと話をしている時、部屋の前を通りがかったリタに声をかけられた。


 バスケットボールを持ったビンと、知らないショートカットの白人女性も居る。


「分かったか! とにかくお前らはし…」


 急にジェフが話すのを止めた。


 彼の顔は、なぜか紅潮している。




「うちら今からバスケをやりに行くんだけど、あんたらも一緒にどうだい?」 


 と、リタが誘ってきた。


(バスケか。良いな)


 学生時代にバスケ部だった雄大には、魅力的な提案だった。


「おっ、楽しそうだな!」


 ライアンは前のめりだ。


「昨日たまたま良い公園を見つけてね。先にやっていた奴らが居たから、仲間に入れてもらったんだ!」


 リタが嬉しそうに教えてくれた。


 小松もディエゴも意外と乗り気だし、雄大も久しぶりに体を動かしたかった。

 

 というわけで、流れで4人ともバスケに参加することになったのだ。 



「そうだ、連れを紹介しておくよ。こいつはビン。こないだ目立ってたから、知ってる奴もいるかもな」

 

 とリタがビンのおでこをちょんと小突いた。


 ビンはよろけながら、「よろしくな」と、微笑んだ。


 ライアンが、「ああ、あの逃げようとしてた奴か」と言うと、


 「それはあんまり言わないでくれよな」と、恥ずかしそうにした。



「で、この娘はエレナ。隣りの部屋の飲んだくれだよ」

 

 リタが可笑おかしそうに言った。


「飲んだくれは余計だよ〜」


 エレナは、勘弁してよという表情を浮かべた。


 そのあと彼女はこっちに向き直り「まぁ、よろしくね」と、みんなに挨拶した。



 A-12号室の面々も、それぞれリタたちに自己紹介をして、それが終わると部屋を出た。 

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