エドラド城下町・2


 エドラド城下町の中心部は、A棟の宿舎から南に徒歩で12分の場所にある。


 雄大と小松は、見た感じ1番栄えていそうな通りを歩いた。


 アーケードの入口には『メイルンストリート』と大きな看板があった。


 まず雄大の目に入ったのは、行き交う人々の装いだ。

 繭にくるまれたような恰好をした女性、両肩に片方ずつの靴を乗せている男性もいる。


「変わった恰好の人が多いね。あれはこっちの世界ではお洒落なのかな?」


 雄大は小松に話しかけた。


「そうかもしれませんね。世界が違えば価値観も違いますし。逆に僕たちの格好だって、ここの人からしたら変かもしれませんよ」


 ポケットだらけの服を来た男性と、スパンコールだらけのマスクをつけた男性が、すれ違いざま、雄大と小松を見て笑った。


「ダセェな」


(どっちがだよ!)


 心の中で毒づきながらも、小松の言葉に納得した。



 ちょうどその時、魔獣車が通りを横切った。後ろからはトコトコと野良猫が歩いてくる。 


「え、猫!」


 雄大は思わず声を上げると、野良猫は驚いて一目散に逃げていった。


「エドラドに猫も居るんだ……」


「猫だけじゃなく、他の生き物も居るかもしれませんね。僕たちだって今ここに居るんですし」


 歩きながら、雄大はこれまでに見た光景を思い返した。


【17時34分】を指す柱時計。


 自転車らしき物で通り過ぎる人たち。


 歩きスマホ(歩き通信魔導具?)をする若者。


 喫煙スポットで、煙草らしき物を吸う人。


 2022年の日本で見た景色が、この世界の通りにいくつも重なっていた。



「月曜か火曜にカフェに居る人の爪を見て、黒っぽかったり茶色っぽかったりしたら、だいたい美容師ですよ」


「そうなの?」


「お客さんにカラーリング剤とか使ったりするからどうしても爪に色が付いちゃうんですよね」


 小松の美容師あるあるに、雄大は興味津々だ。2人は話をしながら、さらに街の中心部へと歩いていった。

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