管理人の男・4


 外壁に大きく書かれた、見たことがない言語の一文字。

 

 雄大がしばらく見ていると、アルファベットのAに変化した。


(説明会のときの黒板と同じ現象だ……)


 異世界者らは、無事に訓練兵用宿舎のA棟に到着した。


「良いかお前ら。今から会う管理人の御方には、粗相すんじゃねえぞ!」


 ベリルは、異世界者らに向けて注意喚起をした。


(管理人の御方?)


 「変な言い回しだな……」


 雄大は、違和感を覚えた。


 兵士らに押されながら、異世界者たちは宿舎の中に入る。


 エントランスは、中規模な高級ホテルほどの広さだ。しかし、内装は質素であった。


 そこで30代ほどの白人男性が、1人で待ち構えていた。リュドスと同じく、白いローブを纏っている。


「ご苦労様です。あとは私が引き継ぎますので、兵士の皆様は帰って頂いて結構ですよ」


 その男性は、平坦な口調で言い切った。


「し……しかし、それでは……」


 ベリルがおたおたする。


(さっきまで、異世界者に偉そうにしていた奴には見えないな)


 雄大には、ベリルが情けなく映った。


「ご心配なく。私1人で十分ですから」


 冷たい響きだ。男性の口調からは「何も口出しするな」という圧がある。


「しょ…承知いたしました!」


 ベリルとエドラド兵たちは、男性に深々と一礼して、そのまま宿舎を出ていった。


 不思議な緊張感が、周囲に漂っていた。


「異世界者の皆様、A棟へようこそ。私がA棟管理人の『ケイギ・ニュラハドス』です」


 男性は自己紹介した。

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