序・2


(今の映像は?)


 視界が突然明るくなった。


 この日寝不足で目が疲れていて、一瞬だけ瞬きをした。ただそれだけのはずなのに、彼には少なくとも3分ほどが経過したような不思議な感覚があった。


「264番 堂本雄大さん、決勝進出です」と、審査員が言った。


 パチパチパチパチと拍手が起きている。周囲のモノマネ芸人たちが祝福しているのだ。


 瞬きの間の記憶が無かった。


 ここが新宿にある囃子エールで、『モノマネゴッド決定戦』の準決勝オーディション会場であることを、拍手の音と共にジワジワと思い出していく。


(そうか、今おれは賞レースに出ていて…)


「え?…いまおれ選ばれました?」


 素っ頓狂な声で隣りのモノマネ芸人に聞くと、


「おい…聞いてなかったのか? お前がファイナリストだよ」


と、彼は雄大の肩をポンポンと叩いた。


(そっか、おれが…)


 「やった…」と呟いて、小さくて力強いガッツポーズを作った。


 その光景を会場の後方にいた『河島たいき』が眺めている。彼は柔らかく微笑んでいた。

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