第5話 暗い学校
今この学校には小山 允の思想、生前に考えていた事が実体化した人間が三人いる。
一人は目の前で息を荒くしている変態。
もう一人は後ろの席で夢を見ている厄介者。
最後の一人は隣のクラスで馬鹿やってる馬鹿。
允の考えていた事、允のキャラが反映されてるためこのような奴らが生まれてしまった。
允は死んでしまったが、こうして允の残した面倒事と、仲良く学校生活を送っている。
そして今、世界が急に夜になりました。
「なんでだよ!?」
真っ暗な教室で叫ぶ。人も居ない。自分だけがこの真っ暗な世界に取り残されてしまった。
「良いんだよ? 教室に人はいないし、これだけ暗かったら何も見えないし、襲ってもいいんだよ……?」
この変態は人ではないから、僕一人だ。
「無視しないでよ!?」
変態はさておき、暗くて何も見えない。
非常出口の緑の光がこちらを誘い、消火栓の赤い光がこちらに来るなと言っているようだ。
「俺はちょっと見てくるよ」
「そ、それフラグです! 死ぬやつ!」
やれやれと思いながら一旦教室を出ようとドアへ向かう。
足が何かにぶつかる。大きく、固いものでは無い。
廊下から漏れ出る薄い光を頼りに目を凝らして覗く。
「…………」
「うぇあ! 夢も居たのかよ!?」
そこには丸くうずくまった夢が居た。
こうなった原因である。自分で作り出して自分で怖がっているようだ。何がしたいのか分からない。
夜の学校に来たいと思ったのだろう。
「まぁ、俺は先いくからな?」
一歩を踏み出そうとしたが、足が動かない。とてつもなく強い力で止められている。
「……夢? 離せ?」
しかし、一向に離さない。
今度は腕を掴まれる。絶対に離れられないような強さで握られる。
「……マコ? 離せ?」
「一人にしないでください……」
そういえば允も怖いのは嫌いだったけな。
***
腕が重い。両手が使えなくなった。
この状況でもしっかりと胸だけは当ててきやがる。
何とか廊下に出てとりあえず非常出口を目指す。
赤く光る消火栓の光が途切れる。影に覆われた。
影の形からして人間だろう。こちらを伺っているようだ。
足音が段々と大きく、速くなってくる。
「……こっちに来てないか?」
「じゃあ、怖いから、もっとくっ付いて良いですか?」
「言ってる場合かよ!?」
とりあえずこの二人を前に突き出す。
「──きざまらぁ〜〜!!」
半泣きの馬鹿が止まらずにタックルをしてくる。二人では止めきれず、三人の重みがこちらにのしかかる。
「……ど、どけ……!」
「私達を盾にしたバツです!」
それに関しては何も言えない。
***
「……廊下ってこんな長かったっけ?」
両腕を塞がれ、前には馬鹿が抱きついているからだろうか、全く非常出口につかない。
「やっぱり私達はここから一生出れないんですよ……」
「とか言って、さっきから擦り付けてくんな」
ずり落ちないように必死でくっつきながらブツブツと何かを言っている。
「わ、我は不滅のそ、存在だ。我は、ふ、不滅の存在だ……」
「抱き着いてくるな、重い」
「…………」
「お前は腕が痛いんだよ」
両腕と前に荷物を抱えているとは言えさすがにおかしいと思いなが一歩足を出す。
感触が違った。地面が変わったのだ。
「……外に出たのか?」
相変わらず目の前には非常出口の明かりが見える。
草を踏みしめる音後する中歩いていくと何かが後ろで落ちた音がする。
水だろうか、何かが顔に跳ねる。嫌な予感がする。これは水ではない。生暖かく、鉄のような匂いがする。
四人揃ってゆっくりと横を見る。
かすれた声が地面から聞こえる。助けを呼んでいる。しかし絶対に助けるべきものでは無いということは分かっている。
突如として声のする辺りの暗闇が払われ、そこには首が転がっていた。
「──タァスケて……!!」
「「ギャァァァァア゛ーーーー!!」」
喉が張り裂ける勢いでの悲鳴がでる。これ以降声が出なけなるのでは無いだろうか、そう思うほどに叫び、全力でその場を気逃げる。
だいぶ離れただろうか。そう少し安心していると、変な匂いが鼻を通り抜ける。
いつもとは違い、少し弱々しくマコか言葉をこぼす。
「も、漏らした……」
「離せ!! 俺から離れろ!」
これまた全力で手を振りほどく。一日でこんなに力を出すのは久しぶりの事だ。
「うっ、うっ、許してくださいーー」
イキリ厨二病も泣き出し、辺りは騒がしくなる。
夢は多分死んだ。さっきのを見てから硬直して動かなくなった。
「生暖かい感覚が脚に沿って流れ落ちていく……! 開放感と共に押し寄せる色々失った喪失感! 恥ずかしい事なのに、事なのに……! 濡れて肌に張り付くこの感触──」
「もぅーー許してくださいーー! どうせ私は服買った時に貼ってあるサイズのシールぐらい邪魔な存在ですからぁーー忘れて外出て恥かく原因ですからぁーー──」
「痛いから! 痛いんだよ夢! 死ぬのは良いけど俺を離してから死んでくれ!」
「…………──」
***
気がついたら僕達は教師に居た。もう学校も終わっていると夢が教えてくれた。
「どう? これも允が考えてた事だよ。怖かった?」
「怖かった? って、お前もいただろうが」
「……? 私は今回は入ってないよ? 允は怖いの嫌いだし、引き継いでる私達も怖いのは嫌だから。」
「──え?」
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