第4話 厨二心

 昼休み、廊下が騒がしく。様子を見に来たが、どこかで聞いたことのある設定に耳を引く。


 眼帯をつけ、ブレザーを羽織るその姿は目も引くものだった。


「そう、我こそが!! 世界最強にして世界最恐!! 悪魔と天使の混血の我には過去も未来もすべてを見透かす伝説の邪眼……! 真理の眼が隠されている! この封印が解ける時、世界は終焉、ラグナロクを迎える! だが安心しろ、我こそが!! 勇者という偽りの仮面を被った──」


 いつまでも続きそうな自己紹介は置いておき、


「……アイツも允の思想の一つだろ? 厨二病の……」


 アイツはよく分からない単語を口にする時があった。『セラフィルムナイト・ウナクール・トイレットペーパー』などとトイレットペーパーの真の名前とやらを教えてくれた。ちなみに真の名前を知る事で契約ができるとか言っていた。


「──!!こ、これは……共鳴!? まさか近くに居るというのか!?」


 左目を抑えながらよろよろと近づいてくる。正直言って今すぐ逃げたい。


「き、貴様……貴様も力を持っているのか!?」


「いや、僕はどこも痛くありません。」


 少し黙ってしまった。正面からの否定は良くなかったかと少し反省をしている所にグーパンが飛んでくる。


 思いっきり目の近くに直撃し、目を手で守ると、


「やはりな!? 貴様の眼も疼きだしたか……!」


 こ、こいつ……!! 殴りたい! 今すぐ殴り飛ばしてやりたい!!


「まぁ、落ち着け。コイツは允の中でも力は無い。特殊な能力も無いから安心しな」


「貴様は……淫乱クソ野郎」


「…………」


「…………」


「くふっっ!!」


 ダメだ……!! 允の思想は全部ダメだ!!


「ところでお前どっから来たんだよ」


 一つの疑問。今この学校、この場に小山 允の思想が三人集まっている。一人は允のあいた席に、そして一人は転校生として。ならばコイツは……?


「……どこから来たか。そうだな、この星の遥か彼方。ディメンションを超えて来た。そう……我こそが!! 銀河系最高峰の他次元の使者! 幾度となく──」


 思いついた言葉を言ってるだけの奴だった。多分意味は分かっていないだろう。


「隣のクラスらしいね」


「分かったのか? さすが同族だな」


「で、何しに来たんだよ?」


「ふふふ……よくぞ聞いてくれた。我の天命、定め、運命、宿命は限りなく原点に近い。放浪者ということだ」


「……特にないらしいよ」


 初めてマコが役に立ったと思った瞬間だった。


「はっ!! 思い出したぞ……!」


「何をだ?」


「貴様も『陰潜みし、漆黒の章典』に命を捧げないか?」


 何を言っているのか理解が出来ない。


 何を言ってるかは分かる。しかし何を言っているかは解らない。


「マコ……?」


「グループに入らないか? って言ってる」


「え? 嫌だよ?」


 目をまん丸にして、口をポカーンとしながら動かなくなった。

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