第34話
「……」
(体の調子は普通だ。いや、むしろ寝る前よりも快調だ。…だからこそ気味が悪い……)
意味不明な現実から半ば逃避するかのようにスマートフォンの操作を続ける雄二。雄二にとって幸いだった事はまだインターネットが機能していたという点だ。
「良かった。…この感じなら、今まで何があったのかをおおよそは把握できるぞ」
SNS、そしてニュースサイトなどを注視しつつ雄二が今現在の情報を収集していく。
<新型の疫病が発生 都が医療崩壊を宣言>
<政府から緊急宣言 不要不急の外出を控えるように国民に伝達>
<全国各地で暴動が発生>
「いったい、世界はどうなっちまったんだ…?」
呆然としながらも雄二は無意識の内に再びSNSアプリへと目を通す。
「…?」
トレンド覧に表示されていたキーワード。その中にあったある言葉が雄二の興味を引いた。
「ゾンビの弱点?」
その文章はひとつの映像と共に投稿されていたものだった。
<ゾンビをぶっ殺したかったら頭を潰せ>
「……」
雄二がその動画を再生する。
<よう!ついに俺達の時代が来たみたいだな~!!こういう瞬間を俺はずっと待ち望んでいたんだよ!!最高の気分だぜ!!>
<うおおおおおおおああああああ!!>
<つーわけでよ、むかつく近所の奴を片っ端から始末してたんだけどよ?俺ちゃん凄い事実を発見しちゃったってわけ~♡>
<そんじゃあ実際に見せてやんよ~…死ねやおらあああああああ!!>
「…っ!?」
白いTシャツを真っ赤に染めた中年の男が椅子に拘束された1体のゾンビを滅多打ちにしていく。
<はあっ…はあっ…はあっ…ここからが肝心なんだよ~…よ~く見とけよクソ野郎共!!>
男が全身全霊の力でゾンビの頭部を叩き潰す。するとそれまで活動を続けていたゾンビがピタリと動きを止めた。
<ひゃはははははは!!ざま~みろクソ野郎が!!>
<…はあっ…はあっ……>
<つーわけで、このクソゾンビ共は頭をぶっ潰せばクタバるわけよ。いいねっ!て思ったやつは♡ボタンを押してくれや>
男が狂ったような笑い声を上げつつ映像が暗転する。そこで動画の再生は終了した。
「…なるほど。やっぱ頭が弱点って可能性は高いか」
雄二自身にも覚えがある。確かに頭部を破壊すればゾンビの活動は停止したのだ。
(そうなると、今後ゾンビの相手をするとき用に、何か効率的に頭部を破壊できるような武器が欲しいな)
「……」
「…そういえば、後ろの収納スペースはまだ詳しく調べてないよな?」
「……」
「確認、しておくべきだな…」
まず外の様子を確認する雄二。薄暗い路地に異変は見られない。それでもなお視覚情報だけではなく音にも注視する雄二。
「……」
(問題ない。…行くぞ)
「……」
極限まで気配を殺しつつ雄二が車から外に出る。しきりに周囲を警戒しつつ車の後方へと回り込む。そして後部のドアを開き中を確認した。
「…あ?…なんだこれ…?」
荷物スペースには寝袋、そして細長い棒状の物が置かれていたのだ。
「これは…ピッケルか? 」
(確か登山とかで使うやつだよな?なんでこんな物が…)
雄二が片手にピッケルを取り出す。ずっしりとした重さ。そして片手でもギリギリ扱えるような絶妙な重心配分に雄二は感心していた。
「…うん。これ、使えるな」
予想外の収穫に驚きつつ、雄二はピッケルを持ちながら素早く車内へと戻った。
ボッチ・オブ・ザ・デッド 骨肉パワー @torikawa999
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ボッチ・オブ・ザ・デッドの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます