Dear K

つまみ

Dear K

吸った煙草の切っ先が

同化した夕暮れ


なに一つ正しくは

言いあらわせなかった喉を震わせ

咳払いをする


安い発泡酒で見た蜃気楼

あれは全部嘘なんだ、と

今さらながらの手紙を書いている


偽りの名前が

尤もらしく輝いて

たまらず歪んだ影に

頭文字をつける


切っても切り離せない

曖昧な煙の中で

過去は気まぐれによみがえり

私を笑っている


皮肉めいた気持ちで

書き出した Dear


でも たぶん 愛したかった

卑屈さと同じ明るさで

そんなことにも気付けなかった

あの日の夕陽はもう沈んでしまって



あれは全部嘘だった、なんて

嘘なんだとは

今さらながら綴れなくて


ため息がわりに

吐き出した煙が白く

立ち上っていく














  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Dear K つまみ @nagaimo-zakuzaku

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ