第12話 新しい年を迎えて
年が明けて小学校6年生になる新たなる1年。
何時もなら家族や親戚で過ごす正月、リビングで高校サッカーでも見てそれで蜜柑を食べて冬休みが終わり再び学校へ行く毎日を迎える。
だが今年はそういって1年ではない。
「うわー、マジか!これ決勝戦だぜ?もう3点差、やっぱ強ぇなぁ絶対王者ってやつは」
リビングで高校サッカーを見るというのは変わらない、此処までは何時も通りの正月だ。ただ今日の雅野家は光輝の隣で玲央がテレビの中のフィールドで動き回り相手を圧倒する白き軍団を夢中で見ており目を輝かせていた。
サッカーをする者にとって憧れる姿の一つなのだろう、玲央もいずれは高校生になったらこの中でサッカーするのかなと光輝はおやつのクッキーをパリパリ食べていて玲央もパリパリクッキーを食べながら「たっけぇ、あのDF!」と相手の放り込んで来たボールをジャンプして頭でしっかり弾き返すプレーを見ていた。
「はぁー、ライバル的なのいなきゃ圧倒的だなぁ」
試合が見終わり結局絶対王者の圧勝で今年の高校サッカーは幕を閉じ、見終わった玲央は満足そうな表情でお茶をすすっている。
「ライバル、かぁ…」
これに光輝はふと思った、ライバル的なキャラをそういえば小説で出していないなと。物語的にライバルようなポジションのキャラを登場させるのは光輝の作品では難しいというのもある。
一歩間違えれば宿命のライバルどころか変人キャラだとかそういったキャラの位置になりかねない、ただ主人公とライバルが競い合ったり時に手を取り合うというのは結構男としては熱く来る物があり憧れたりはする、光輝もまた例外ではない。
今の小説にライバル登場させようかと玲央にも光輝は相談をしてみる。
「そんな無理に登場させなくてもよくね?」
お茶を飲み終わり、玲央は光輝の作品でそういったキャラを出すのは苦しいのではないかと考えていた。
今の作品は高校生のハッカーが主人公で仲間が強面の名探偵や武闘派の女刑事だ、その中で主人公のライバルというのをどう登場させるか正直難しい。
これがスポーツ物だったりファンタジー系ならまだライバルというのは作りやすかったかもしれないが、ハッカーのライバルなど一体どんな感じなのか分からない。
「させるとしたら同じ凄腕ハッカーとか…になっちゃうかな?それぐらいしか思い浮かばないよ」
「そういうストーリー、今考えてるか?」
「正直全然…」
ライバルも混ぜてのストーリーの展開、そういった事はまだ考えていなかった。ただライバル良いなと思って思いついただけに過ぎず、実際に加えて活躍させるとなれば物語もまた考えなければならない。
勢いのまま書いてしまえば変な矛盾が起こって読者に指摘される確率は高いはずだ。
光輝は軽く頭をかきつつスマホ画面の編集ページを見つめていた。
「というかその作品もPV1万を突破かぁ、何かコンテスト出した方が良いんじゃね?」
「えっ…いや、流石に無理…」
「やる前から諦めんなってー、ひょっとしたら大賞あるかもしれねーじゃん」
結構評価を受けていて中々評判良い小説となりつつある光輝の作品、これに玲央はコンテスト出した方が良いと光輝の肩を組んで自分のスマホに映る光輝の作品を見て勧める。
ただ当の本人は乗り気ではない、というか自信がない。自分のような奴が賞を取れる訳ないとやる前から後ろ向きだったが、玲央はそんな事ないと強くコンテストに出る事を勧めるのを止めない。
やがて玲央の強い押しに負けて光輝はやるだけやってみようと玉砕覚悟で挑む事となりコンテストに応募するが…。
「あ、これ駄目だ…」
「え?何でだよ?」
「だってこれ…ファンタジー限定だよ、僕の違うから…」
「あっちゃ~、ジャンル違いかぁ」
今募集しているコンテストはラブコメだったりファンタジーだったりと光輝の作品はその条件を満たしておらず参加が出来なかった。
それに光輝はホッとしたと同時に何処か残念と思い複雑な心境だった。
内気な少年が小説を書いてみた ~皆の輪の中に入れない彼は小説に関わり小さな幸せを見つけて道を歩いて行く~ イーグル @dpmhrk
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