いざ、叛逆(仮)へ……

平日の一時間の部活動。

毎日のBURSTでのバイト。

それらは俺に初めて相対性理論というやつを理解させてくれた(笑)。


この高校は進学校らしく、6月の最終週の日曜日に文化祭が毎年行われている。

なんでも、『受験シーズン』というやつがあるかららしい。


今日はその前日の土曜日。

前夜祭と公にはしてないが、音楽ホールでそれが行われる。

お笑い芸人、マジシャンなど、外部からのゲストを呼び、校生だけで楽しむ。

今回その中に、今売り出し中であり、知る人ぞ知るというプロのバンドが呼ばれていた。


明日になればあそこには、全国大会常連の吹奏楽部が上がり、おそらく、それなりの演奏をするのだろう……。

前日にしてすでにその準備は終わっていて、周到に組まれた音響設備がまざまざと俺の眼前にある。


「相手にとって不足はないですね」

こんな戯言にもならないことを口にできるほど今の俺には自分でも驚くくらい余裕があった。

「そうね。プロのバンドってのも良い前座になってくれそうだし!」

こっちはこっちで、いまにも破裂しそうになっているのが一目で分かってしまうほど、けれど静かに現在進行系で、気化した血液という名の酸素を、自分の脳に送り込んで自我という平静を保っている。


お笑い芸人は良くも悪くも普通だった。

マジシャンはマジシャンで当たり障りのない手品を披露して引っ込んだ。

そんなだから、最後トリに登場するバンドには、この会場にいる学生たちに多大な期待を生んでいた。

ざわざわという、興奮と我慢がごちゃごちゃになった音が響き渡る。

そんな中、そのプロのバンドが使うんだろう楽器類が粛々とステージ上にセッティングされていく。

「天くん、今から出てくるバンド知ってる」

「知りません」

「そうなのね。まあ私もなんだけど、この手のものは奏の範疇なのよね……」

「そうなんですね」

この一連の会話に興味が持てず、空返事をする。


準備が終わり、今か今かと、点在するバンドのファンなんだろう学生たちがさっきよりもさらに高揚し、グラデーションに満ちた声を上げ始めた。


「ギター、ないですね」

舞台上にはドラム、ベース、マイクスタンドが設置されていて、俺が今ここに来ている最大の理由であるギターは置かれなかった。

「帰ります」

そうやって言うのも勿体なくなって一瞬で舞台に背を向け、俺は急いでBURSTでのバイトへと向かおうとした。


その瞬間、向かい風のような歓声が俺の体に抵抗を生じさせた。


「天くん、あれ」

「なんですか」

せっかく予定よりも早くBURSTに行けたのに、この抵抗に、先輩の呼び止めのような言葉に腹を立てる。

結果俺は、二、三歩進めた場所にそのままの状態で足を止めて、上半身だけ振り返った。


「なんでが」


ステージには品のない、真っ赤な色に、白のピックガードが不釣り合いに邪魔をしているギター。

それが妙に馴染んだ長身の男が、肩から下げて観衆のはっきりと黄色になった声々に控えめに答えていた。

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