風雷!!!

ドンタス、ドンタス!

タッタタン! タタタタタ!

バスバスバスドン!


先輩の音に必死で喰らいつく。


ポンポン、ポロポン!

ポッポポン! ポポポポポ!

ポンポンポンポロ!


できるだけ正確に。

けれどその音に負けないように。


はじめは親指だけではじくようにしていた。

それじゃ間に合わない。

人差し指を親指で固定するようにして、人差し指の爪の表面、それと、親指の先で弦を

上から下。

それじゃダメだ!

上下に。

できるだけ無駄のないように。

そうするうちに、痛みが和らいでいく。


よし!

これでもっと速く弾ける!!


雷鳴をかき消す!

俺のこの『風』で!!


すこし前から気がついていた。

でも、そのあまりの鮮明さに恐怖が勝った。

今は違う。

これだけじゃ足りない。

こんな『風』じゃ先輩の『雷』に負ける!

もっと。

もっとだ……。

先輩も言ってたじゃないか。「もっと」と。

『もっと』激しく、『もっと』大胆に。躊躇や遠慮なんて必要ない!

簡単じゃないか、だって俺はずっと前からそうだっただろ!


だから俺の『風』、


烈風を巻き起こせ!!!!!



教室中の窓ガラスは最初、揺れていた。

けれどそれは先輩の出す正確なドラムのリズムによって生まれた『揺れる』。

そこに、俺のギターの『音』が混ざる。

風と雷。

風雷の音は揺れる、というよりは、『響く』だ!


そしてそれが今、不規則かつ大胆に、割れんばかりにいる!!


『反響』


その意味が初めて理解できる。


部屋すべてが楽器になって響く!


それはさらに強力に、大量に鳴る。


押さえきれなく

ガラスはもう揺れていない。

俺と先輩の出す音を、圧を、跳ね返しきれなくなってただ外へと。

逃げ場を無くし、破裂しそうになって、内から外に大きく膨らむ!


絶頂だ。

これがということだと認識する。



「お前らいいかげんにしろ!!」



突然開け広げられたドア。

そこから勢いよく音が漏れ出す。

圧縮されていた音が行先を求めてすべての部屋に鳴響していく。

残響というにはあまりにも大量の音。

大気圧に抗い続けた俺達の圧はその何倍にもなって吐き出されていった!


ここじゃ狭い。

狭すぎる。


目一杯に膨らんでいたガラスは、急激に元に戻ったことでところどころにヒビが入ってしまっていた。



「なにやってたんだ! なんだこの尋常じゃないは!?」


開かれたドアのとこには知らない人が立っていて、なにやら俺達に向かってバカみたいに必死に……多分、怒っている。


「あーあ、これじゃ台無しね」

先輩は俺にいたずらに笑ってみせた。

「ですね」

俺は結局絶頂をむかえることはできなかった。でもそんな先輩のおかげで笑い返せすことができた。


気持ちいい。……か。

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