第十二話 因果応報
近くにある布に死体から溢れる血を吸わせておく。部屋の隅に死体を移動しておく。 そして、次の獲物にかかる。
一番奥の部屋で嬌声をあげている二人組だ。
「おうっおうっ、オラオラ!」
「ああ、あああっ!」
静かに扉を開けても気がつく気配もない。一枚布越しのベッドの上ででかい身体が激しく動いている。
室内に入り、扉を閉める。
「おら、いくぞいくぞ!!」
「ああ、こおぃ!!」
扉を閉めればほとんど声が漏れないことは確かめてある。
一段と激しく動いてドサリと崩れたのを待って布をはぐ。
「何だてめぇは!!」「てめぇなにもんだ!?」
なんというか、巨体と巨体、なかなか、衝撃的な光景が広がっている。
声でわかってはいたが……そういう趣向があることは知っているが、なかなかに強烈だ。
「なんとか言えやぁ!!」
枕元に隠していた剣を突き出してくる。もう一人も……抜かれた後に剣を抜いている……やかましいわっ。
「ぐあっ、がはっ……ち、畜生……」
剣を避け、胸に剣を滑り込ました。
下になっていたせいでうまく身動きが取れなかった大男は、かぶさった死体のせいで反撃もできずに首を斬る。
「あとは、一気に行くか……」
一番良さそうな首領が使っていた剣を変わりにもらっていく。
それ以外にも作りの良い武具がいくつか有った。
鎧は音が出るので今は身に着けないが、上物の服がいくつか有ったので着替えることにした。
使い古した服よりも質の高い服は動きやすい。
それと、やはりいい靴はいい。格段に動きやすくなる。
「行くか」
最後の部屋に向かう。
相変わらず外まで聞こえる大声で騒いでいる。お前らのボスが殺されたことにも気がついていない。
「ういー、しょんべんしょんべん」
都合よく一人が部屋から出てきた。
「あん? ベルグか? いや、だ、だれだてっ!?」
「8」
いい切れ味だ。斬られた本人が気がついていない。何がされたかわからないうちにドサリと倒れていく。
「あー? なんだー? コケたのか? ションベン漏らすなよー!」
ぎゃははははと笑いが漏れると同時に俺は部屋に飛び込んだ。
椅子に座って声をかけていたやつ。
「7」
そのまま大笑いして椅子がひっくりがえりそうになっている奴。
「6,5」
返す刀でもう一人。
「4」
奥で慌て始めた奴。
「3」
そして、その奥の一人。
「て、てめぇ!!」
「2」
ようやく剣に手を伸ばそうとしていた男。
これで室内は終わりだ。
俺は洞窟の出口に向かう。
「あー、まだ交代の時間になんねぇのかなぁ」
「そういや、そろそろじゃねぇ?」
二人は軽口を叩いていたが、想像もしていない洞窟側からの襲撃に反撃一つ出来ずに倒されることになった。
「0だ。終わりだな」
改めて内部のクリアリング、周囲のクリアリングを行う。
「やはりあるか」
裏手に隠されていた馬場を見つけ、そして、馬車を手に入れた。
作りはそんなに良くないが、これで荷物問題が解決する。
「いざとなったら現地で作るつもりだったが、時間を短縮できるな」
山賊共が溜め込んでいた物のなかでまともなものは全て馬車へと積み込む。
死体は一番奥の部屋に押し込み油と木々を組んで火を付ける。
ここで行われたおぞましい行為への送り火となって欲しいものだ……
4頭の馬と馬車。それに武具やお宝、食料に酒。正直、これほどうまくいくと思わなかった。
「どっちが賊かわからんな」
自虐をつぶやいても誰も慰めてはくれない。
俺は、俺のために、賊を狩る。
同じ様に目星をつけた場所を巡って行ったが、この馬車を手に入れたせいで思わぬ誤算が生まれた。
「おら、さっさと降りてこい! 馬車も馬も積荷も全部俺達のもんだぜぇ!」
相手の方から襲ってきてくれた。これなら情報収集も必要ない。
降りかかる火の粉を払えばいい。
そして……
「貴様らのアジトはどこだ?」
「だ、誰が話すか……ぐあああっ!」
「もう一本やるか?」
「や、止めてくれぇ……話す、なんでも話す! だから命だけは……!」
「アジトまで連れて行く、嘘だったら殺す」
こうしてアジト探しまで行える。効率がいい。
アジトについて命を助けてやったのに襲ってきたので打ち倒したりもしたが、こうして日暮れまでに3つの野盗のアジトを壊滅させた。
「多すぎだろ」
幸運なことに、馬たちは非常に頭が良く俺の言う事をよく聞いてくれた。
馬車を二台も引き連れて帰ったので門番の男には驚かれた。
この日の賊狩りによって、二台の馬車8頭の馬そして馬車にたっぷりの積荷を手に入れた。
「な、何をしたんですか?」
「周囲の賊を狩った。しかし、本当に治安が悪いな。これはしばらく忙しいぞ」
「す、すげぇ! アレス様!」
「し、しかし、こんな事をしたら賊が黙っていないのでは?」
「大丈夫だ、根絶やしにしてきたし、俺は周囲の賊全てを狩るつもりだ」
「なんという……」
「アレスさんはお怪我などは?」
「問題ない、魔法使いがいて服が燃えたが、着替えた」
「ま、魔法使い!? け、剣士が相手にできる者ではないはずでは!?」
「ナイフを投げて倒した」
「……凄いですね……」
「村長! 酒が、酒がこんなに!」
「皆で分けましょうね……アレスさん、本当にありがとうございます」
「気にするな、俺はメルティのために戦うと決めた。
礼は不要だ」
嘘です。めっちゃ嬉しいです。気恥ずかしいのです。
こうして、俺の賊刈りの日々が始まった。
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