第5話4月2日①
「今日は学内ランキング戦に向けて模擬戦を行います!各自、怪我のないように気を付けて行ってください!」
昨日、リコリスを召喚しコミュニケーションを取って、今日は初めての模擬戦だ。
リコリスと色々と作戦は考えてみたけど、それがこれから通用するかどうかが今日決まると思うと緊張してくる。
「アルス様、今日は全勝しましょうね!」
「とりあえずリコリスに怪我がないようにして欲しいかな」
「分かりました!全戦完勝ですね!」
「まぁ……それでもいいよ」
肝心のリコリスは学内ランキング戦上位を目指しているからか、かなり気合いが入っていて空回りしないかもちょっと心配だったりもする。
「それじゃあ早速くじを引いていくよ!」
対戦相手はくじ引きだ。これは本戦の学内ランキング戦でも同じ形式らしい。
今日は最初の模擬戦ということもあって、ほとんどの先生方と最上級生の先輩方が補助につくことになっている。
「1番!アルス、リコリスペア!」
どうやら俺達は最初の試合らしい。相手は誰だろうか?
「2番!カモミール、ゾディアックペア!」
「これはカモミールの勝ちだな」
「そうだな」
「賭けようぜ!俺カモミール!」
「俺もカモミール!」
「賭けにならねぇよ!」
「「「ギャハハハ」」」
あの三人はいつも賭け事してるな。それはどうでもいいとして、カモミールというのはそんなに強いのだろうか?
至るところからカモミールが勝つという言葉が聞こえてくる。
その疑問は相手を見たときに氷解した。
「なるほど、ミスリルゴーレムか」
「むぅ……無機物相手には魅了は効きませんからね。でも……なんだか……」
「どうかした?」
「いえ、その……パターンAでもよろしいでしょうか?」
「パターンA?リコリスがやりたいなら構わないけど」
「ではお願いします!」
「分かった」
パターンAはとりあえず魅了をかけてから戦闘を開始するパターンだ。
リコリスはサキュバスだけあって、魅了の弱点である無機物相手には効かないというのを想定したパターンも練っていたのだが……。なにか考えがあるのかもしれないな。
「双方準備はいいようですね。それでは試合、開始!」
「魅了!」
試合開始と同時にリコリスがミスリルゴーレムを魅了する。ミスリルゴーレムは魅了をレジスト……してない?
俺の目からは、ミスリルゴーレムが魅了にかかっているように見えるのだが。魅了状態になっているのを見るのは初めてなので、勘違いかもしれない。
「リコリス?」
「えっと……成功しました」
「え?成功?」
「はい」
「この場合って……」
「完勝ですね!」
「あ、アルス、リコリスペア勝利!え?勝利?でいいんだよね?が、学園長!」
「狼狽えるでない。いや、こればかりは仕方ないかもしれんが落ち着きなさい。」
なんだか、学園長が出てくる事態になってるんだが。
大丈夫だろうか?こちらはルール違反になるようなこととかはしていないが……。
それほど待たずに話し合いが終わったようだ。どんな裁定を下されるのだろうか?
「今回、アルス、リコリスペアは無機物であるミスリルゴーレムに対して魅了を成功させた。これに対して違法行為は無かったと断言しよう。しかし、無機物に魅了を掛けるというのは伝説のリリス様以来となる。これを耐えられる存在は居ないという判断を下す。よってアルス、リコリスペアを学内ランキング戦において評価規格外として殿堂入りさせることとする!」
どうやらリコリスは、とんでもないことをしでかしていたようだ。
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