王国
@raika_0627
王国のお話
あるところに王様がいました。
一国の頭である王様は1人で憂鬱とした毎日を過ごしていました。
そこに群れから逸れた一匹の狼が王様の元を訪ねてきました。
「私はこの国の王様です。あなたは狼なのですね。ここまで来るには大変苦労したでしょう。
遠慮なさらずに上がって下さい。」
狼は王宮に赴き、促されるまま王様の部屋までついていきました。
部屋に着くと狼は王様に聞きました。
「誰にも知られずに群れから逸れた私をなぜ迎え入れてくれたのですか。私なんかを迎え入れる意味はないでしょう。」
「それは違うでしょう。あなたは群れを忘れてここまで来た。私はあなたにとても思うところがあるのです。
大樹を支えるあの象も空を泳ぐクジラも私は言葉でしか知らず無知なのです。だから旅するあなたがとても羨ましい。」
「私は王であなたは自由です。私は王であるから外に出ることも出来ず何も見ることができない。
もしも願いが叶うのならば私をあなたに変えてほしい。この檻から出してほしいのです。」
狼は王様がこんなことを思っていたのかと驚きました。何でも手に入れることができる王様に縛られるものなど無いと思っていたからです。
王様と狼は陽が沈むまで話をしていました。旅の最中で雨降りの神様に会ったこと、谷底に住む巨人を見たこと、例を挙げるとキリがないほど。王様は子供が絵本を読み聞かせてもらっているかの様に笑みを溢しながら話を聞いていました。王様もパレードや晩餐会、今まで体験した事を話していました。
二つの願いが向き合い、互いに互いが眩しい程に笑みを溢し合っていた。その両方が手を伸ばし、2人はいつかの願いを頭に浮かべていました。
群れから逸れた狼と、群れにうずくまる王様は手を触れ合って目を閉じて互いの心を確かめ合っていた。
自分が獣で「私が王」で、願いの先に見えたもの。ほれは「私が獣」で自分が王で、2人は手を離していた。
あれほど望んでた互いの檻の中はいざ踏み込んでみれば前の苦しみと何も変わらなかった。
王国 @raika_0627
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。王国の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます