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 せみオーケストラが何時間続いているのだろうか? それを考えたくないくらい空が明るくなり、朝になってから大分時間が経った。いつもならというか平日ならとっくに家を出ている時間。でもまだ私はベッドの中にいた。


 今日は日曜日。仕事がないし、外出もしなくていい。そんな日だからこそ、私はいつまでも布団にいても許される。そこでその特権を生かして、私は長い時間寝ていただけだ。


 だからだろうか、何か夢を見た気がする。家の模型を作る、そんなシンプルな夢だった。赤い屋根、白い壁。それでいて人形しか入れないくらい、小さな家。できあがったその家は、私のリアルでは今まで見たことがない感じだった。


 夢のことなんてどうでもいい。頭の中でふわっとできて、現実には何も影響を与えることができないまま消えていく幻。そんなことよりも現実で何が起きているかが大事。


 そこで私はベッドの中に寝転んだままスマートフォンをとりだして、SNSを見る。


『クラウドファンディングに協力お願いします』


 えっとこれは学校でのLGBTQの教育にまつわる教材を配る、その資金集めのためにしているクラウドファンディングの宣伝だ。どんな教材か分かったらもっとクラウドファンディングに出資する人が増えたかもしれないな、こんな宣伝を見る度にそう思う。


 とまあこんな大事なツイートがある以外は、たわいもないつぶやきだ。地域コミュニティFMのパーソナリティで新人VTuberのおはようツイート、底辺なろう作家のSSの宣伝ツイート。そんなたわいもないつぶやきを見て、時間を潰す。


『アウティングした子どもが守られて、アウティングされた子どもが転校しなくちゃいけないってどーゆーこと? 加害者にも未来があるんですって、それじゃあお先真っ暗な被害者のことはどうなの?』


 そこでこんな攻撃的なツイートを見て、思わず身体が固まる。


 要するにセクシャルマイノリティの子どもよりも、マジョリティの子どもを優先しているってことかな? 例えセクシャルマイノリティの子どもが被害者で、マジョリティの子どもが加害者であっても、そうなってしまうのかもしれない。


 世の中自分が理解できること以外は排除するのが普通で、それは学校の先生も同じ。そこでこういうことが残念ながら起きてしまうのかもしれない。


 生きている限りは何かを傷つけなくてはいけない。マジョリティの子どもがマイノリティの子どもを傷つけ、このツイートをしている人がマジョリティの子どもを傷つける。そこには傷しかなくて、優しさはない。


 でもそれが現実なのかもしれない。傷つけて、傷つけられて、傷つけて。傷だらけでぼろぼろになったとしても、誰も気にしない。もはや世界が傷だらけで、ぼろぼろかもしれない。


 やさしさがほしい。自分を肯定してくれるような、やさしさが欲しい。こんな傷だらけの世界はいらない。


 でもそれは難しいんだろうな・・・・・・。こんな感じで、傷つけるようなことが多いインターネットで、やさしさを求めるようなことは難しい。


 私はSNSのアプリを閉じて、スマートフォンの電源自体切ってしまう。こうして傷だらけの世界と、少しだけ離れることができた。


 さてこれから何しようか。起きちゃったから、もう寝るのはやめる。そうだ起きよう。

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