【第十六章】安心できる人1
"鬼火退治"から帰宅した時、時刻は午前2時を回っていた。死んだように眠っていたわたしは、窓を叩く音で起こされた。眩しいと感じたのは、電気がつけっぱなしだったからだ。
のそのそとベッドから立ち上がり、右足を庇いながら窓を開ける。
「・・・酷い顔してるわね」
空舞さんが言うのも無理はない。防火服のおかげで身体は無事だったが、顔全体が赤く腫れ上がっている。
部屋の時計は4時を回ったところ。全然寝れてないじゃん。空舞さんが部屋へ入ってから電気を消し、ベッドへ戻った。
「空舞さん、なんで昨日来なかったんですか・・・というか今日」 枕に向かって呟いた。
「行ったわよ。あなた達より先に鬼火を見つけたわ」
「えっ・・・じゃあなんで?」
「わたしは火とは相性が悪いのよ。近づけない。だから上から見守ってたわ」
「そお・・・なんですか」
確かに、空舞さんの身体に火がついたら一瞬で燃えてしまいそうだ。
「最初に言ってくれれば、何か出来る事があったかもしれないのに」
「ごめんなさい。わたしもあそこに向かう途中で聞いたので・・・」
「そう」
次からはちゃんと前もって聞いておかなければ。「あの、空舞さん、少し寝てもいいですか・・・身体が限界で・・・」
「妖怪を見たわ。別の」
──これは、寝ている場合じゃなさそうだ。眠さに抗い、上半身を起こした。
「何処でですか?」
「ここに向かう途中よ。公園にある池の中に居たわ」
「・・・どんな妖怪?」
「近づいたら潜っていなくなったからよく見えなかったけど、姿形は子供だったわ」
「子供・・・ですか」
「ええ、しばらく様子を見ていたけど、それからは姿を現さなかったわ」
「池がある公園か・・・何処だろう」
「明るくなったらまた見てくるわ。あなたはまた寝なさい」
そう言うと、空舞さんはクチバシで窓を少しだけ開け、自分が出てからまた閉めた。
これから、鍵は開けっぱなしにしておこう。
わたしはまた横になった。
また来るなら、今来る必要はあったんだろうか。というか、池って──火の次は、水か・・・。内心、げんなりした。
今はとにかく、睡眠に集中しよう。
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