火傷にご用心23


早坂さんは重い溜め息を吐いた。


「あなたを見つけた時、心臓が止まるかと思ったわ」


「あの、鬼火は・・・やっつけたんですか?」


「ええ、瀬野が本体を潰したわ。それも、あんなふうに飛び込むなんて・・・下手したら死んでかもしれないのよ?」


「・・・この服、役に立ちましたね」


早坂さんはわたしを睨み、呆れたようにまた息を吐いた。早坂さんが心配してくれてるのはわかるけど、わたしは説教より褒めてほしいんだけどな。


「中条、よくやった」


そう、こんなふうに。瀬野さんはすでに刀を鞘に納めている。


「ありがとうございます。瀬野さん大丈夫ですか?」


「軽い火傷程度だ」


料理でもしてたんだろうか、この人達は。


「先に言ってくれちゃってこのアホ」ボソりと呟いたのは、早坂さんだ。わたしの脇を掴み、立たせる。


「今、何か言いました?」


早坂さんはいつものようにわたしの頭に手を置いた。怖い顔が優しい顔に戻っている。


「よくやったわ。大したもんよ、あなたは」


思いがけない言葉に、嬉しさが込み上げる。身体の痛みなど忘れて舞い上がりそうになった。


「俺がさっき言っただろう」


「ええ!先を越されたわ!ったく、普段無口なくせに余計な事は言うんだから」


「どう考えても褒めるところだろ。お前が言わないから俺が言ってやったんだ」


「言うつもりだったのよ!」


「だったら早く言え。なあ、中条」


「はい、わたし褒められて伸びるタイプなので」


早坂さんは、黙った。そして、「フン」とそっぽを向いた。イジケている。


「・・・ほんとに、2人が無事で良かったです」


今になって、実感した。この2人に何かあったら、わたしはどうなるんだろう。考えるだけで身体が震える。いつの間にか、わたしにとってそれだけ大きな存在になっているんだ。


「よし、こんな場所、さっさとおさらばしましょうか。虫もたくさんいるしね」


「ギャッ・・・賛成です」

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