火傷にご用心22


その時、身体にのしかかる重み。

攻撃を喰らったと思ったが、熱くない。


「瀬野ッ!!」


耳元で早坂さんの声がした。



その後は、何が起きたかわからなかった。


気づけば、わたしは早坂さんの身体に組み敷かれていた。


「え・・・なんで・・・」


「ギリギリだったな」


声がするほうを見ると、瀬野さんが地面に膝をついていた。さっきあの塊が落ちた場所だ。手にはナイフを持っている。


「鬼火はっ・・・」


「大丈夫、もういないわ」


目の前に早坂さんの顔があった。早坂さんはわたしの額に唇を押し付け──わたしを抱くようにして上体を起こした。


「怪我は?」


全身が痛いが、今はそんな事どうでもいい。


「大丈夫です」


早坂さんはふうと息を吐き、わたしを抱き寄せた。痛いくらい強く抱きしめられ、息がしづらい。でも、それ以上に押し寄せる安堵。わたしは早坂さんの身体に腕をまわした。


「よかった・・・てっきり・・・」声が震える。


「てっきり?」わたしを抱きしめたまま早坂さんが言った。


「てっきり・・・」その後は口にしたくない。「ていうか、何があったんですか!?戻ったら2人ともいなくて・・・」


「吹き飛ばされたわ」


「吹き飛ッ・・・」


「咄嗟に木に隠れたんだけど、木もろとも吹き飛ばされちゃった」


「ちゃったって・・・怪我は!?」


「打撲程度よ、瀬野も大丈夫」


──打撲程度で済むか?普通。

ふと、早坂さんの背中に触れて気づいた。


「早坂さん、服が・・・」


早坂さんは身体を離し、自分を確認した。所々、パーカーが燃えている。


「ま、上だけで良かったわ」


「火傷は!?」


「少しね。大丈夫よ」


──少しで済むか?普通。

そんなに簡単に燃えないと言うのは、嘘じゃなかったらしい。


「それより、あなたねぇ」早坂さんはわたしの肩をグッと掴んだ。


あ、ヤベ。


「いったい何考えてるのよ!刀を持ってこいとは頼んだけど、斬りかかれなんて言ってないわよ!」


「・・・だって、2人がいなかったし・・・」


「だからってどうしてそんな発想になるわけ?自分から向かおうとするなんて無茶すぎるわ!」


「いや、自分からは向かってないです」


「揚げ足を取・ら・な・い・の」早坂さんが悪魔に見えた。


「スミマセン」

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