優秀な偵察者13


「ふふ、どうしたの?キョロキョロして、何か気になる?」


ルームミラー越しに早坂さんと目が合った。


「何気に初めて乗るなって、後ろに」


「ああ・・・来る前にこの大男、後ろに行かせればよかったわ。雪音ちゃんはあたしの隣って決まってるのに」


「大男はお前もだがな」


決まってるんだ。「後ろも広いですね。わたしのベッドより広いな」


「アハ、シート倒せばそれなりに広いわよ」


後方を覗いて、気づいた。「あれ、後ろって座席なんですか?」


「ええそうよ、シート倒して物置きにしてるだけで、本来は7人乗りよ」


「ほえー」えらい広いトランクだと思っていた。確かに、収納ケースやら道具箱やら、いろんなものが置いてある。バカデカいキャリーケースが何のためにあるのか、よくわからないが。──ああ、前に車に着替えを一式積んでいると言っていたから、これに入れているのかな。



「よかったわ」


「え?」


「てっきり、怒ってるものと思ってたから」


「・・・怒ってませんよ」


「俺は怒られたぞ、お前が電話切ったあとに。余計な事喋るな降ろすぞって」


「それが余計な事なのよ!ホントに降ろすわよ!」


「・・・今度から、瀬野さんに連絡します」


「ええ!?なんでよ!」


「瀬野さんはわたしを無視しないでくれるから」


「無視したわけじゃないのよぉ・・・わかってちょうだい」


「わかってるから、瀬野さんに連絡します」


「俺は構わないぞ」


「お黙りっ!わかったわ、今度からちゃんとあなたにも連絡するから。ね?」


「・・・信用出来ないな」鏡越しの視線を避けて、窓に呟いた。


「ガーン・・・」


「口では何とでも言えるしな」


「アンタ、ホントに窓から放り出すわよ。雪音ちゃん、約束するわ。信じてちょうだい」


チラっとルームミラーを見ると、綺麗な目がこちらに訴えている。これ以上は運転にも支障をきたしそうだ。


「約束。ですよ」


「ええ、約束するわ」


──・・・なんだかなあ。約束したところで、この人はわたしの身の安全を最優先に考えているから、いざという時は、わたし抜きで動くと思う。自惚れかもしれないが、わたしはそれが1番こわい。




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