優秀な偵察者12


「何がいるかわからないから今回は2人でいいって言ってただろ」


「お黙りっ!雪音ちゃん、ホントに悪気はないのよ!」


自然と溜め息が、出た。


「今溜め息ついた?もしかして怒ってる?」


「・・・別に怒ってません」


「そお?声が怒ってるように聞こえるんだけど」


「瀬野さん、あとどれくらいで着きそうですか?」


「やっぱり怒ってるじゃない!」


「ここからだと、あと15分くらいか?」


「わかりました。では、待ってますね」


「おーい、雪音ちゃん」


こちらから通話を終了した。また、溜め息が出る。


「どうして怒ってるの?」


「いや、怒ってませんよ。ちょっと、悲しいだけです」


早坂さんの考えてる事はわかる。あの人は、わたしを出来るだけ危険から遠ざけようとしているだけ。わかってるけど、蚊帳の外に置かれたみたいで悲しいんだ。


「なぜ悲しいの?」


「なぜって、わたし抜きで行こうとしてたから・・・」


「でもあなた、蛾は嫌いなんでしょ?行かずに済むなら喜ぶべきじゃない」


「・・・そうなんですけど、仲間外れにされるのは嫌なんです」


自分で言って子供っぽいなと思ったが、事実だ。


「人間は不思議ね」






瀬野さんの言う通り、それから約15分後、早坂さんの車がわたしの前に停車した。

助手席に瀬野さんが座っていたので、後ろのドアを開ける。


「こんばんは」


「あなた、外で待ってちゃ危ないでしょ!」


「いや、家の前なんで大丈夫です」


「ダメよ!夜も遅いんだから」


こう言う時は、スルーに限る。「空舞さん、どうしますか?このまま一緒に行きます?」


わたしの肩にいる空舞さんは、車の中を観察している。「いえ、狭いのは嫌いなの。悠里、場所はわかってるのよね?」


「ええ、何度も通ってる道だからわかるわ」


「じゃあわたしは先に行って待ってるわ」そう言い、空舞さんは夜空に羽ばたいて行った。



わたしが乗るのを確認し、早坂さんも車を走らせる。

いつも前に乗るせいか、後ろの席は凄く新鮮だった。シートも広く、座り心地も良い。ここで1泊しろと言われても難なく過ごせそうだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る