優秀な偵察者11
「もしもし」
「もしもし雪音ちゃん?お仕事お疲れ様」
「お疲れ様です。・・・あれ?今外ですか?」若干、騒音がする。
「車よ。ちょっと瀬野、うるさいからラジオ消して」
「瀬野さんも一緒ですか?」
「ええ、財前さんの所に行った帰りなの。どうしたの?何かあった?」
財前さんの所に、行ってたんだ。ちょっと羨ましい。
「あの、空舞さんが妖怪を見つけたみたいで」
「あらまあ、さっそく?優秀ねえ。雪音ちゃん、スピーカーにするわね」
「あ、わたしもしますね。空舞さんと一緒にいるんで」
ソファーに移動し、テーブルの上に携帯を置いてスピーカーにする。
「それで、何の妖怪を見たのかしら?」
「蛾よ」
すぐに反応はなかった。2人が顔を合わせているのが想像できる。
「蛾って、飛ぶあの蛾?」
「雪音と同じ事を言うのね。そうよ、2メートル程ある蛾よ」
「遊里、もう少し音量上げろ。何処で見たんだ?」
「また説明するのね。中学校の校庭よ。夜に体を発光させながら飛んでいるのを見たわ」
「・・・中学校?名前はわかるか?」
「たしか、北山中学校だったわ」
電話の向こうで2人が何か話しているのがわかったが、雑音で聞き取れない。
「凄いタイミングね。実は、今ちょうどその話をしてきたところなのよ」
わたしと空舞さんは顔を合わせた。「どーゆう事ですか?」
「ここ数日、その中学校の生徒が相次いで原因不明の病気にかかっていると財前さんが報告を受けたみたいでね。あたし達も今しがた聞いてきたところなのよ。空舞ちゃんの話を聞いて確信したわ」
「・・・財前さん?」
「ええ。昨日言った、あたし達が助けたい人よ。今度空舞ちゃんも紹介するわね」
「俺達も見に行くところだったし、ちょうどいいな。中条、今から行けるか?」
「え?あ、はい」1つ、疑問が浮かんだ。「あの、2人で行くつもりだったんですか?」
一瞬、間が空いた。「言っておくが、俺はお前にも声をかけなくていいのかと聞いたからな」
「いや、違うのよ。ほら、聞いたばかりの話だし、ついでに行くってなっただけで、あなたを無視したわけじゃないわよ?」
──もの凄く、言い訳に聞こえるのは気のせいだろうか。
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