対峙4


「今度また、うちに食べに来なさい」


「・・・えっ、いいんですか?」


「もちろん、あなたの持ち帰り用もたくさん用意しとくわ」


「ヤッタ、死ぬほど美味しかったから、また食べたいと思ってたんです」


「ふふ、そう言ってくれると嬉しいわ」


「おばあちゃんにも会いたいし」


「美麗ちゃんも、雪音は今度いつ来るんだって聞いてくるのよ。近いうちに予定を立てましょう」


「楽しみにしてます」







財前さんの家へ行くのはこれで2回目だが、なんとなく道は覚えていた。閑静な住宅街を走り抜けた先にある、緩やかな上り坂。そこに、侵入禁止の標識。

前回車を止めた所に、白いワゴン車が止まっていた。


「あれ、瀬野さんの車ですよね?」


「そうね」


早坂さんは瀬野さんの車の後方に自分の車をつけた。

車内はエアコンが効いていた為、車を降りた瞬間、ムワッと熱気を感じた。

── 前に来てからそんなに時間は経過していないのに、不思議と懐かしく感じる。

早坂さんはジャケットを脱ぎ、ネクタイを外すと後席のドアを開けて乱暴に放り込んだ。



「シワになりますよ」


「いいのよ、どうせクリーニングに出すから。暑くて着てらんないわ」


ボタンを外して袖を捲る一連の動作に、くぎ付けになる。シャツ1枚でもこんなに"優雅"に見えるのは、元々の土台の完成度ゆえの話か?

なぜか、無性に腹が立つ。


「・・・睨まれてる?」


「いいえ」


「行きましょうか。歩ける?」


「抱っこは結構です」


「遠慮しなくていいのよ」


「してません」




財前さんの家は、相変わらず独特な雰囲気を醸し出していた。家の周りに生い茂る木は、以前より深くなっている気がする。まるで、この家を守っているかのように。

早坂さんは前回同様、インターホンを鳴らさずに玄関のドアを開けた。


「こんばんはー。入るわよー」


そして前回同様、玄関を上がってすぐ右手の襖を開ける。


「遅いぞ」


「アンタが早いのよ」


挨拶をしようと財前さんを探したが、中に居たのは、瀬野さんと、───・・・ん?子供?


「やあ雪音ちゃん。また会えて嬉しいよ」











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