その男、財前 龍慈郎16
「俺がいること、忘れてるだろう」
──正直、忘れていた。
「話が済んだら早く出せ」
「はいはい」早坂さんはゆっくりと車を発進させた。
家の前で車を降りたわたしを、早坂さんが運転席から呼び止めた。
「あなたの事は、何があってもあたしが守るわ」
「・・・あい」
安心させるために言ってくれたんだろうけど──内心、本当に安心してる自分がいた。
脳がパンク寸前で、思考が完全に停止している。その日は、帰ってすぐ眠りについた。
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