思索4


「よっしゃー!今週も乗り切ったわ!飲みに行っけるぅ〜」


本日、日曜日、午後22時45分。

最後のお客さんが帰った直後である。


「お疲れ様〜、今日は暇で助かったね」


「そーゆう事、店長が言っていいんですか」


「忙しいの嫌いだもん」店長はいつもの定位置に向かい、タバコに火をつけた。


「今日は雨だから、いつもより人通りも少ないですもんね」


「雨も嫌だなあ」


「毎回の事ですが、言わなきゃ気が済まないので言いますが、これからも言いますが、店内は禁煙です」


店長はわたしを無視して次のタバコを待機させている。まあ、確かに、わたし達ですら死にかけているこの暑さの中、常に厨房で調理し続けているんだから、大変だなとは思うけど。


「雪音、ボケッとしてないで早くホール片付けて。こっちもう終わるわよ」


「あ、うん・・・って、えっ!?もう洗い物終わったの!?」


「彼氏が待ってるか・ら」


たぶん、漫画だったら語尾にハートが付いている。「麦男(むぎお)くんね」呆れながら、ホールの掃除に取り掛かる。


「あんまり待たせちゃ悪いでしょ」


「そうかな、急がなくても逃げないと思うけど」


「俺も会いに行こうかなあ、麦子ちゃんに」店長が反応した。


「あ、行っちゃいます!?もちろん、店長の奢りですよね?」


「だから、奢らなかった事ないでしょ」


「いえ〜〜い」


「なんか、この会話一昨日も聞いたような気がするんですけど」


「明日休みだし、飲みに行かないなんて非常識だと思わない?ね?てんちょ〜」また、ハートが付いた。


「だとすると、世の中の半分の人は非常識になるんじゃ。てか、休みとか関係なしにしょっちゅう飲んでますよね、お2人」


「どうでもいいけど雪音、アンタも行くでしょ?今日は」"今日は"にとても圧を感じるのは、気のせいじゃないはず。


「行こうよ雪音ちゃん、明日定休日だよ。帰りは2人とも僕がちゃ〜んとタクシーで送ってあげるから」


「通り道ですけどね。どっちも」店長は毎日30分程かけて徒歩通勤をしているが、帰りは基本タクシーだ。というのも、毎日のように飲み歩いてるから。飲食店の知り合いが多く、これまで連れて行かれた店は軽く10を超えている。広く浅くがモットーらしいけど、最近はただのアル中にしか見えなくなってきた。


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