第27話 まずはお土産を買いましょう

 そして土曜日となった。

 冬馬と夏子は、もう何度も行っている、いつものショッピングモールへと出かけていった。


「確か今週にやってたかな、九州の物産の即売会」

 冬馬は現在、催し物が開かれている事を、ショッピングモールのアプリで下調べ済みだった。ショッピングモールにはイベントスペースのようなものがあり、色々な催し物をしている。バレンタインや母の日、お歳暮やクリスマス等、イベントに合わせてセッティングされるが、そういったものがない時には、各地の名物を集めた物産展を開催する事もある。たまたま開催されているのが、九州地方の名物を集めた物産展だ。晩のおかずになるようなものからスイーツ、九州しか売っていないような物産も揃っている。冬馬は、その地方でしか買えない物が好きなので、こういった時にはよく顔を出しているのだ。


「ちょうど出店していてよかったなぁ。美味しいんだよな、〇ち吉の煎餅」

 冬馬にとって昔、通販で注文して以来、〇ち吉の煎餅が好きだった。色々な種類の煎餅や餅菓子を扱っているが、固いものは少ないので、お年寄りでも食べれるし、味もバラエティに富んでいる。また煎餅を作るのに使用されている水も販売していて、これがまた美味しいのだ。煎餅が美味しいのが解る気がする。冬馬にとっては、元祖〇波屋柿の種と並んで、好物だったりした。


「へぇ、聞いたことないけど美味しいの?」

 夏子にとっては馴染みのないものなので、美味しいかどうか疑問に思っていた。因みに〇ち吉は、現在では全国に支店が多数設置されていて、以前よりも入手はしやすくなっているが、残念ながら冬馬が住んでいる地域には支店はない。夏子が知らないのも仕方がないかも。

「ここの煎餅は美味しいよ。自分用にも買うから、帰ったら一緒に食べよう。とりあえずこの期間限定の缶入りのにしようか」

 冬馬は、手頃な値段で色々な煎餅が入っているものを選んだ。贈答用に缶入りのものも取り扱っていて、好みのものを選ぶのだが、冬馬は人気のある色々な種類のものが入っているものが好きだった。まぁこの辺りのものが無難だろう。


「自宅用にはこれかな」

 更に普段は特定の日にしか売らないお徳用袋をいくつか選んだ。商品にならない壊れた煎餅を袋詰めにしたお徳なセットなのだが、かなり値段が抑えてあるので、発売時には購入制限がかかるくらいだ。醤油味やサラダ味等、種類も豊富なのだが、今回は、醬油味とアーモンドが入っている物を選んでみた。

「帰ったらゆっくり食べよう。これ美味しいんだよ」

 冬馬は、ニコニコしていて上機嫌だった。夏子も試食してみたが美味しいと思ったので、冬馬と一緒に寛ぎながら食べるのを楽しみにしていた。


 二人はそれ以外のものも見て回っていた。普段は購入する事もないような九州の特産品が、色々と並べられていた。その中でも冬馬が注目していたのが、中々売っていない博多の業者の辛子高菜と、これも地元ではなかなか売っていない、◯まかっちゃんのインスタントラーメンだった。これは日持ちするから食べるのは後でもいいので、それとは別に、博多ラーメンの生麺のものを選んでみた。実は冬馬は、ラーメンが好きで、気になる店があったら、食べに行ったりしているのだ。

「豚骨スープがいい味してるんだよ。味変で辛子高菜と入れてみるのもいいし。博多ラーメンは久しぶりに食べるから楽しみだな」

「冬馬くん、楽しそうね」

 こういった地方の物産には詳しくない夏子だが、嬉しそうに売り場を見て回る冬馬を見ているだけで満足だった。冬馬がまるで少年のように思えてくる。


「夏子は何か欲しいものとかある?」

「うーん、特にないかな」

 二人は、それ以外の所も色々と見て回ってみた。辛子明太子や辛子蓮根の試食もさせてもらったが、夏子は辛いものよりも甘いものの方が好きだったので、う~んと唸るばかりだった。とりあえず冬馬は、おかずになりそうなものと、おやつになりそうなものを選んで購入した。夏子には、熊本で有名な〇まモンがパッケージに描かれている黒糖ドーナツ棒を買ってあげた。これも通販では人気の商品だったりするが、なかなか買おうとしないんだよね。



 「夏子、そろそろお昼を食べに行こうか」

 時間的には少々お昼には遅くなっていたが、お昼時には混雑するのがわかっていたので、あえて混む時間帯を避けていた。混んでいない事を祈って、二人はフードコートへと向かっていく。まだ多少混雑はしているが、何とか席を確保していたので、何を食べようか悩んでいた。そんな中、冬馬の提案でラーメン屋を選んでみた。九州繋がりという事で、長崎ちゃんぽんで有名なチェーン店の〇ンガーハットだ。博多ラーメンもいいけれど、長崎ちゃんぽんもまた美味しかったりするのだ。

 とりあえず冬馬は、『野菜たっぷりちゃんぽん』を、夏子は、これは食べた事ないからと『長崎皿うどん』を注文してみた。


「え、この皿うどん美味しい!これならいくらでも食べられそう!麺がパリパリしてて面白い食感だし」

 夏子にとって皿うどんは初めてだったようだが、野菜たっぷりの餡かけといい、好みと合っていて大喜びだった。流石におかわりまではしなかったけれど。お腹いっぱいになり満足気にしている姿は微笑ましかった。冬馬も少し食べさせてもらったけれど、成程、これもまた乙なものだなと感じていた。普段は食べないような類のものであるので、新鮮に思えてくる。


「冬馬くんのも美味しそうね。味見させて♡」

 夏子は、冬馬が食べているちゃんぽんをちょっと食べてみた。最初、冬馬が持ってきた時には、山盛りとなっている野菜に驚いていたのだが。太麺とオリジナルの豚骨スープが特徴的だ。

「これも美味しいね。冬馬くん、野菜、もうちょっと貰うね」

 夏子にとって、長崎ちゃんぽんも皿うどんも初めての体験だったが、味的には気に入ったようだった。少々ボリュームがあるので、全部食べるのには大変そうに感じられた。今度来た時には、もう一度食べてみるのも悪くないかと。



 ○○○○


 百貨店等で開かれる全国各地の物産展って大好きなんです。特に北海道と東北の物産展が好きで、開かれると出かけに行きます。リピートで買っているものもあり、店によっては、顔なじみになっていたりもしますね。また夏子と冬馬が出かける時には、自分のお気に入りを紹介していきたいですね。





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