第18話 冬馬くんのプライベートな時間 音楽編
「ねぇ冬馬くん、冬馬くんは仕事が終わってから、家でどんな風に過ごしているの?」
夏子は気になっていたことを聞いてみた。
「そうだなぁ、音楽が好きだからCDを聴いたり、Youtubeを検索してみたり。音楽関係のブログをやっているから、更新したりとかかな。後はスマホゲームもやってはいるんだけどね」
「ふ~ん。何となくオタクっぽいのね」
「ほっとけ」
「でもどんな風なのか興味はあるかな。詳しく教えて」
夏子にとって、自分の趣味ではない部分もあるが、他でもない冬馬が興味を持っているものだ。詳しく知りたい気持ちもあった。
「そうだな。音楽はジャンルを問わずに色々聴くのが好きだな。特に好きなのが昔のロックかな」
「ロックかぁ。私はあんまり聴かないなぁ」
「まぁ人それぞれだからいいさ。Youtubeとかを検索したりすると面白いものが出てくるよ」
冬馬はパソコンを操作し検索し始めた。普段からよくやっているから慣れた手つきだ。
「こんな感じで音楽を検索して聴いているんだよ」
「へぇ、知らない曲ばっかりだ」
「まぁ、この辺りは年寄りかマニアックな人しか聴かないかもね」
「そうなんだ、やっぱり男の子って古風なのね」
夏子は冬馬のパソコン画面をじっとみつめていた。曲名や歌手は知らないものばかりだったが、たくさん曲を聴いていることはわかる。普段はほとんど喋らないし無口で表情も乏しいのに、時々少しだけ笑顔を見せてくれることがある。そんな表情を見ると、何となく夏子も嬉しくなってしまう。彼の趣味だから彼の為のものではあるのだろうが、その彼を引き付けている音楽をもっと知れば、もっと彼の事もわかってくるかもしれない。
「ねぇ、私もちょっと聴いてみていいかな」
「あぁいいよ」
冬馬は少し席をずらし、夏子にパソコンの画面が見えるようにした。
「どれがいい?」
「うーん、これかな」
夏子は適当に指を差してみた。その曲は冬馬も好きなギタリストのレアなグループの曲で、冬馬自身のマイフェイバリットソングに入っている曲だった。
「じゃあ再生するよ」
冬馬は少し操作をしてから曲を流し始めた。ギターの音色が心地良い。歌詞は英語だが、何となく雰囲気はわかる気がする。名曲のリストに常に入るような名バラードだ。かなり昔のライブ映像だが、画像をレストアしている様で、綺麗な色彩となっている。
「どう?」
「うん、いい曲ね」
しかしながら偶然だろうけれど、この曲の歌詞の和訳は『やっと行くべき道を見つけた、やっと自分の居場所を見つけた』というものを含んでいた。自分の事なのか、夏子の事なのか。どちらにせよ、今の自分にはピッタリと合う曲だった。
「もっと聴いてみたいね。お勧めを教えて」
冬馬は、昔の洋楽のロックから色々なタイプの曲をチョイスしてみた。ゴリゴリのロックから、コーラスの美しいフォーク系の曲まで。夏子は真剣に聴いている。
普段は一人で聴いている冬馬だが、たまには他の人と音楽を聴きながら一緒に過ごす時間もいいものだなと思った。もしかして夏子だからかもしれなかったが。
それにしても、昔の曲は夏子が知らないのは当然だが、『あ、この曲は〇オンで閉店する時に流れる曲じゃないの?』と言われた時は、昔の曲でも、今の時代にも色褪せず生きているんだなぁと思ったりしたわけだった。
○○○○
因みに夏子が偶然、指をさして選んだ曲は、エリック・クラプトンがスティーブ・ウィンウッドやジンジャー・ベイカーと結成したグループであるブラインド・フェイスの曲で『Presence of the Lord』。クラプトンのギターソロが印象的な名曲です。唯一のアルバムである『スーパー・ジャイアンツ』のジャケットは、トップレスの少女を使用していたので、アメリカではジャケットを変えて発売されています。
https://www.youtube.com/watch?v=CU_P7EJmIAw
〇オンの閉店時に流れる曲と言うのが、サイモン&ガーファンクルの『明日に架ける橋』。これのインストゥルメンタルのカバーバージョンですね。オリジナルは、フィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドに通じる感動的なものです。
https://www.youtube.com/watch?v=nvF5imxSaLI
余談ですが、サイモン&ガーファンクルの曲で、映画『卒業』にも使用された『サウンド・オブ・サイレンス』は、自分が洋楽にのめり込むきっかけとなった曲だったりします。エレクトリックバージョンとアコースティックバージョン、どちらも好きですが、好みはエレクトリックバージョンですね。
https://www.youtube.com/watch?v=Shjqdhc87Xw
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