第67話三本のかかし
解放された労働者たちからなでまわされ、もみくちゃにされたあと、解放祝いのダークチェリーミルク酒をあおられ、ラビィは悪酔いし、もう飲めないもう飲めないと、ようやっとのところで酒宴をおいとまし、ふらふらとミルキーウェイを歩いていた。
「酔っ払い回れ右。酔っ払いは災いの元。」ふいに声がして、ラビィの前になにかが立ちふさがった。ざんばら髪で色白の片足立ちをしたマネキンのようだった。
その声に対して酔っ払いラビィは変に頭の回転がよろしかった。
「悪い事なんて何にも無いよ。酔いは良い良い。良いことだよ。だから喜び事にお酒はつきものじゃないか。」
かかしはあれまっという息をすると、ぴょんと道脇にどいて、木の棒にでもなったように静かになった。
ラビィはなんだろうと思いながら、目をぱちぱちしつつそこを通り過ぎた。
少し行くと、またずいっとラビィの前になにかが立ちふさがった。
今度はくるくるカールの巻き毛をしたカラフルなかっこうの片足立ちのピエロ人形だった。ラビィはやっと、ははぁと納得した。
これは“三本のかかし”だ。
「魔女ご機嫌麗しく」に書いてあった。魔女は家の人よけのために、魔法をかけた3本のかかしを家の前の道に置くのだそうだ。ラビィは酔っ払い歩きいつの間にか、ミスティックホールに着いていたのだ。「3本のかかしと知恵比べ、言い負かせ。知恵博士。」そう「魔女ご機嫌麗しく」に書いてあった。
ラビィはいつの間にか一本目のかかしを見事クリアしていた。
さあお次はなんだ。
ラビィは身構える。
「いいお天気ですね。」
特に天気といったものの無い空間だったが、「ええ、雑多な隕石も無く宇宙遊歩日和です。」とラビィは返した。
「遊び心は善であるよう。」
そうにこりとラビィに笑いかけると、2本目のかかしもまたぴょんと脇道に退いて、木の棒のようにかたまった。
こんなものでいいのかとラビィは鼻歌でも歌いたい気持ちになった。
でも3本目のかかしはそう簡単にはいかなかった。
「おい手錠うさぎ、罪人がここへなんの用だ。」
ギロリと獅子顔のトーテムポール人形が、ラビィを睨み、やはり片足で立ちふさがった。これにはどう言い訳していいか分からなかった。
罪についてしゃれを言うわけにもいかない。ラビィは手に冷や汗をかきながら考えた。「手錠をしているからって罪人とは限らない。」
「ほう?じゃあ何の手錠だ。」
ラビィは冷や汗をさらにかいた。
「ジャグリングの道具かもしれないよ?そう、だってまだ僕は判決をうけていないんだから!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます