第2話 同盟
翌日、俺は昼休みに保健室に向かった。佐々木さんと会うために。ちなみに先生は許してくれた。それどころか、先生は俺に佐々木さんの回復の助けになってほしいとまで言った。どうやら、彼女を日常に戻すためという事らしい。
つまり、責任重大だ。
そして保健室の奥に入る。そこには一人でお弁当を食べている佐々木さんがいた。
「何?」
「一緒にご飯食べよう?」
「別にご飯を食べるなんて言う単純な作業、一人でもできるから」
どうやら彼女には人と一緒に食べるという楽しみを失ったらしい。
俺がその楽しさを取り戻してあげたい、そう思った。
そして彼女の隣によって、弁当を広げる。すると佐々木さんは、ベッドから飛び出して、向こうに走り去ってしまった。
「いきなり積極的だったかな……」
反省だ。そう簡単にはうまくはいかないという訳か。彼女には悪いことをしてしまった。……そう簡単には男への恐怖心は取れないよな。
「先生それじゃあ」
後で出直そうと思った俺は先生にそう言って帰ろうとする。
「上手くいかなかったってこと?」
「そうですね。いきなりご飯を一緒に食べるという行為は積極的すぎましたね。ストーカー認定されたら困るので、今日はここで」
「ええ」
そう、先生にわかれを告げ、教室に戻る。すると、予期していた通り、康生に「振られたな」と言われた。
うるせえよ。
今日も一緒に康生と一緒に帰る。ちなみに一緒に帰ろうという提案は今日も一蹴されたしまった。
このままでは佐々木さんと永遠に仲良くなれないな。
だが、今日一つだけ気づいたことがある。それは放課後に保健室を覗いたところ、誰かとメールしてたと言う事だ。「友達?」と訊くとすぐに逃げられてしまったのだが。
相手は優香と書いてあったのが一瞬見えた。多分友達? なのかな。
友達はいると言う事でホッとした。
そんな今日のできごとを振り返っていると、電柱に当たってしまつた。そしてそれを見て康生が笑ってた。許さんぞお前。
そして、家に戻る。
「優香かあ」
今の佐々木さんが唯一? 心を許せる人間。少し気になってきた。優香という名前から女子ということはわかる。逆にいえばそれ以外は何もわからないのだ。
明日はどんな手で佐々木さんと仲良くなるか……そう考えながら夜ご飯を食べた。
「あなた、美優と昨日しゃべってたよね」
佐々木さんの友達の木村恵美子さんが話しかけてきた。要件は佐々木さんについてだそうだ。彼女曰く、怖くて佐々木さんには話しかけられないらしい。そして喋っていたことは、保健室の先生に訊いたらしい。肯定で答えると、
「そう……それでどんな様子だった?」
「様子って、普通にこの世のすべてに興味がないって感じだったな」
「やっぱりそう……」
そう木村さんは沈んだ顔を見せた。
「木村さんって、佐々木さんと上手くいってない感じなの?」
上手くいってないとは思う。だってそうじゃなかったら木村さんが常に沈んだ顔を見せているのもおかしいし、今の質問にしたってそうだ。
だが、これは聞いておかなくてはならない。
佐々木さんの現状を知るためにも。
「恵美子でいいよ。それでそうね。上手くいってないわ。初めて職員室に行った時、何も話してくれなかったもん。それどころか、恐れた顔をされたし。メッセージも既読つかないし。だから正直今の状態でメッセージの連絡先交換ができたあなたはすごいと思うわ。まあそれも美優を立ち直らせることが出来たらの話だけど」
そうだ、友達になるとかどうこうの前に、最終目的を忘れたらいけない。佐々木さんのことを何とかしなければならない。
「それで……」
まだ続いてたらしい。
「私と手を組まない? 美優を立ち直らせる同盟」
「それどんな同盟なんだ⁉」
「単純よ。美優を立ち直らせるために何でもやる同名」
「なるほど。手を組もう」
よく分からないが、味方は多い方が嬉しい。それに佐々木さんの友達なら猶更だ。
「やった。それで何か私が知らない情報とか持ってる?」
「情報か……」
情報と言えばこの前の優香と言う名前だ。その子が鍵を握ってるに違いない。という事でそのことを伝えた。すると、「でかした!」と言ってきた。
「なるほど。優香……優香ね。たぶん、あの子だ」
「知ってるんですか?」
「うん。私の知り合いの知り合い。住所も知ってる」
「でかした!」
そしてその日の放課後、優香と言う人の家に行くことになった。ちなみに康生も行きたいとごねたので、康生もつれていく。
康生に関しては興味本位でついて行きたいだけだと思うが。
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