第10話 魔力解放!!
冷たい声を放つと、暗闇からローブを身にまとい素顔を隠す二人が姿を現した。
「お前だな。俺たちの仕事を邪魔したのは」
黒いローブを身にまとう二人は昨日、襲ってきた魔法使いとはまた違う雰囲気だった。
「邪魔した覚えはないけどな」
「噓をつけ。俺の部下を随分、かわいがったそうじゃないか」
「あ~あれね。そうか、お前たちの部下だったのか、なら悪かったな」
実力は昨日の輩より格上なのは間違いない。
身なりからして、同じ近接戦闘向けの魔法使いに見えるけど、だったらわざわざ姿を見せる意味がない。
「これだから世間知らずのガキは嫌いなんだ。いいか、これが最後の警告だ。邪魔をするな。そして二度と彼女にかかわるな。約束するなら、見逃してやる」
「同じようなことを昨日も聞いたような気がするが…………答えは一つだ。嫌だね。むしろ、こっちが警告してやる。もうチグサを追うのはやめろ。そしたら、見逃してやってもいい」
「くぅ、下手に出れば調子に乗りやがって、相手が二人だけだと思うなよ、クソガキ!!やれ、お前ら!!」
その言葉を合図に俺は黒いローブを身にまとう輩に囲まれた。
「二人だけじゃなかったのか」
「もう遅いぞ。お前はここで死ぬ」
数は7人。実力は目の前の二人と同等といった感じだな。
「まあ、ちょうどいい運動にはなるか」
俺はすかさず、剣を引き抜いた。
「ちっ、やれ!!」
左右八方、黒いローブを身にまとう輩は手のひらをこちら向けて、ブツブツとつぶやく。
そして。
「「「燃え尽きろ、ファイヤーブレス!!」」」
詠唱とともに高火力の炎が暗闇を照らした。
「これで終わったな」
「…………いや、まだだ!」
炎の中から銀色の粒子が光輝く。それは炎を飲み込むほどに大きくなり、一振りの剣へと吸い込まれる。
「いい火力だが、火力だけだな」
「…………自身の魔力を使い、魔法を飲み込んだ!?」
「どれだけ強力で、火力のある魔法でも大きな魔力の前では意味がないからな。さてと、せっかく立派な炎をもらったんだ。使わせてもらうぞ!!」
吸収した炎はシンの剣からあふれ出すように燃え盛り、目に留まらぬ速さで振るった。
おそらくリーダーの立ち位置である二人を狙いながら目の前の防御する間もなく切り、すかさず体をひねり背後の敵をも焼き切る。
それはあまりにも一瞬だった。
「並の剣士ではないようだな。生き残った者は下がれ!俺が相手してやる」
「私も加勢しようか?」
「俺一人で十分だ」
そう言って黒いローブを脱ぎ、素顔をあらわにした。
「お前が何もかなんて知らん。殺せば全員、一緒だからな」
「そうかよ」
わかってはいたけど、こいつもの隣にいるやつも結構強い。
「わめんくじゃねぇぞ、ガキ!エクスプレス!!」
無詠唱の重力魔法がシンにのしかかる。
「これで終わりだ、死ね!燃え尽きろ、ファイヤーブレス!!」
動けないところに放たれるファイヤーブレス。
だがシンはすました顔で軽々と剣を振るい、魔法を一刀両断した。
「うん?」
そこで気づく、周りの異様な静けさに。
これだけ大きな音を立てれば誰かが様子を見に来てもおかしくないはずだ。なのに、明かり一つもつかない。
「安心して、結界が張り巡らせてるから。だから、存分に戦っていいよ」
「…………なるほど、そういうことか」
「おい、何口走ってんだよ!」
「うるさい。それよりさっさとけりつけてよ。また失敗したら私の命も危ないんだから」
「わかってるわ!せかしやがって、戦いはここからだろうが」
やっぱり、相手の目的はチグサで間違いない。
となるとやっぱり、早めに決着をつけたほうがよさそうだ。
なにせ、目の前の宿にはチグサが眠ってるんだ。いくら結界があろうと魔王には効果が薄いはずだ。
「いやここで終わらせる。これ以上時間はかけられない」
今の俺の体でどこまで耐えられるかわからないが早く済ませるにはこれしかない。
俺は制限していた魔力を解放した。
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