インターハイ予選決勝ー徳丸高校ー3

 第1クォーターが始まった。


 簡単にだが、改めて解説しよう。


 バスケは、1クォーター10分で、4クォーター行い、第1クォーターと第2クォーターの間、3クォーターと4クォーターの間に1分間のインターバルがある。


 2クォーターと3クォーターの間は、15分のハーフタイムがある。


 スタートのジャンプボールは慧と澤本が行った。


 ジャンプボールは、通常、センターが行う。また、ボールを叩くだけ。ジャンプボールを行う選手が取ってはいけない。


 ジャンプボールの後、ボールを取ったのは安見だ。


 安見は、すぐ、安藤にパスをした。


 安藤はポイントガード。プレーを作る司令塔。つまり、俺と同じポジション。負けるわけにはいかない。


「勝負!」


 安藤はニヤリと笑って、1対1を仕掛けた。


 俺は1対1をさせないように進行を防ごうとしたが、スーッと通り抜ける感覚があって、背中がゾクッとした。


 安藤の気配がしないまま、俺の右側を簡単に抜けていき、ドライブした。


「しまった!! 頼む!! 慧!! 貴!!」


 俺は思わず叫んだ。


 慧と貴で安藤のディフェンスにつくダブルチーム。


 安藤はダブルチームが作られる前に、横野にパスをした。


 ハーフの選手、横野よこのメルテスらん。パワーフォワード。主にゴール周辺のシュートを狙うポジション。


 ただ、今は、3ポイントシュートの位置にいる。


 パワーフォワードも3ポイントシュートを狙う。


「スリー!!」


 完全にノーマークだ。


 横野はゆっくりと放つ余裕があって、教科書のような綺麗なフォームでシュートを打つ。


 そのボールは、シュッと音を立てて、リングの中へ。


 いきなり、3ポイントを打たれた。


「まだまだだな」


 安藤に言われて、俺は呆然とした。


 あのとき、何があったんだ。全く気配がしなかったなんてことがあるのか。


「ボーっとしている暇はないぞ」


 慧の声に我に返り、頭をオフェンスに切り替えた。


 ドリブルをしながら、どのようなプレーをするか考えていると、その隙に安藤がボールを奪う。これをスチールという。


 俺は安藤にスチールされた。


「悪いな、このボール、貰った」


 安藤はスチールした後、1人でドリブルしてシュートまで持っていった。


 1,2,3のリズムでボールをリングに置いてくるようなシュート。これをレインアップシュートという。


 安藤はレインアップシュートで、しっかりと決めてきた。


 どういうことだ? まただ。全く気配が感じられない。ある意味、凄い。気配を消してプレーできるのだから。


 安藤を攻略するにはどうすればいいだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る