再びインターハイ予選12

 慧は空中でボールを受け取り、そのまま両手でリングにボールをたたき込んだ。豪快なダンクシュートでアリウープを決めてみせる。


 大きく揺れるゴールにぶら下がっている慧。


 慧はゴールから離れると、拳を握って小さくガッツポーズをしていた。


 それを俺は見ていて、慧の肩をポンッと叩いた。


「よくやった。慧」


 慧は照れくさそうに微笑んだ。


 その後、慧はすぐにディフェンスに戻ると、目を奪われるようなシュートブロックをした。


 立川がチャンスだと思って、レインアップシュートを決めようとしたとき、慧はボールを力強くはたく。


 そのボールは宙を舞った。


 そのボールを立川が取って、またゴール下のジャンプシュートを放つ。


 そのシュートを再び、慧がシュートブロック。


 またしても、立川がボールを取った。立川も同じ手には乗らないと、ワンバウンドさせて慧をかわしてシュート。


 ただ、慧も負けていない。しつこいくらいに、立川から離れない。


 3度目のシュートブロック。


 見事に慧は、シュートブロックを成功させた。


 今度はそのボールを貴が取った。すぐに俺にパスをすると、俺はドリブルをしながら、走れと合図した。


 ディフェンスがまだ戻れなくて、智樹がノーマークになっている。迷わず、俺は智樹にパスをする。


 智樹はレインアップシュートをする準備に入った。


 そのままシュートで行けると思ったが、山木が戻ってきていた。


 シュートはできないと判断した智樹は、レインアップシュートから瞬時に切り替え、空中で慧にパスすることを決断した。


 慧は智樹からボールを受け取り、ゴールと立川のディフェンスを見る。


 どのように判断したのか、ゴール下までドリブルで駆け抜けるドライブをするフリして、スリーポイントラインより後ろまで下がった。


 立川も読めなかったようで、慧との距離が空く。


 慧はそれを狙っていたかのように、フッと笑う。


 慧の中で何かが変わったのか? 少なくとも俺には余裕があるように見える。


 慧は、立川との距離が空いたことで、チャンスと思ったか、シュートを放つ。


 スリーポイントラインより遠い位置。


 ディープスリーだ。慧はディープスリーを打つために立川を翻弄したのか。


 そのボールは、スパンッと音を立てて、リングに吸い込まれた。


 同時に試合終了の笛が鳴った。


 ビザ―ビーター。


 改めて得点を見てみる。


 115-102


「よし!!」


 俺たち城伯高校は勝利した。


 試合が終わると、整列してお互いに礼をした。


「楽しかったよ。よかったな、またバスケができて」


 川野は慧に握手を求めた。


「ありがとうな、俺らも楽しかった」


 慧は川野と握手をした。


 城伯高校の谷牧の不祥事のことはニュースにもなっていたから、当然、川野も知っている。それもあって気を遣ってくれたのか、またバスケができて良かったと言ってくれたのは、凄く嬉しい。


「インターハイ行けよ」


 副キャプテンである安井が、俺に声をかけてくれた。


「あぁ、ありがとうな。インターハイ行けるように頑張るよ」


 俺はハイタッチをしながら答えた。


 その後、俺たちは、復活した慧の活躍もあって、インターハイ予選決勝まで辿り着いた。


 ここで勝てば、念願のインターハイ出場が決まる。

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