新チーム5

 今日から新1年生が部活見学にやってくる。入部希望があれば、すぐに入部も可能だ。ただ、1週間は仮入部。溢れてしまったら、入部を断ることもある。


 コーチが見られないからというのが理由らしい。高宮コーチはどう考えるんだろう。とにかく楽しみだな。


 とりあえず、今日から少しずつ授業も始まるので、ちゃんと勉強しよう。また、バスケができなくなると嫌だからな。


 授業はまだ午前中まで。午後からは部活だ。でも、部活前に腹ごしらえはしっかりしないとな。


 授業が終わると、学食へと急ぐ。さっさとお昼ごはんを食べ、猛ダッシュで体育館へ行く。


 早くもシュート練習をする。


 あっ、食べて、すぐは運動しちゃダメなんだっけ。消化し切れてないときに運動したら、逆流するとかなんとか。


 良い子の皆は真似しないでくれよな。本来は食べた後は、2時間は置かないとダメらしいけど。


わかっていても、早くやりたくなり、結局、休ませることなく1対1を想定した練習を始めた。


 それは俺だけ。他のメンバーはゆっくりご飯を食べて、体を休ませる。


 まだ、誰も来ていないから、体育館にドリブルする音だけが響き渡っていた。


 感覚としては腕が力んでいるような気がするな。


 俺は昨日、高宮コーチに言われたように、力みをとるためにブラブラさせた。


 よし、これでもう一度。


 少し力みが取れてきたかな。


 しばらく練習していると、ようやくメンバーが体育館に集まってきた。


「てか、おまえ、早いな」


 達也がやってきた。


「本当にバスケをやるときだけは早いな」


 達也に続き、貴が呆れ顔でやってきた。


 俺は、毎回そんなこと言われているので、達也と貴の言葉をスルーした。


 それでも、仲が悪くなることはない。それは、それぞれがリスペクトしているし、自ら考えて行動できるからだ。


 だから、このチームが強くなれるように、俺もきちんとプレーを動かさないと。


 そんなことを考えながら、シュート練習をしていると、全員が揃った。ここから本格的な練習が始まる。


 試合形式の練習中、ボールをキャッチしようとした俺は、体が支え切れず、バランスを崩した。


 なんとか踏ん張ったけど、体幹が弱いな。もっとプランクをやったほうがいいかな。


 プランクはうつ伏せのから、肘とつま先だけで体を持ち上げてキープした状態。


 地味にきついけれど、体幹の基本トレーニングだ。


 それを見ていた高宮コーチは、練習後に体幹のことについて話してくれた。


「靴下履いてると、やりにくいから裸足になってやるのが1番良いけど」


 高宮コーチの前置きがあってから、説明する。


「足の指でしっかり床を押さないと、バランス崩した時に倒れてしまう」


 ここで、高宮コーチはチェックしてみようと、2人1組になるように指示した。


 用意したのはメモ用紙。そのメモ用紙を1枚切り取る。


 1人はただ立つだけ。もう1人は立っている人の足の指にこのメモ用紙を入れる。


「メモ用紙が指と床との間に入ってしまったら、浮指といって、しっかり指が床に密着していないことになる」


 高宮コーチは、ゆっくりと説明した後に俺たちに問う。


「床に足指が密着していないということは、どういうことだかわかるか?」


「床からの反発での力が出ないから、ジャンプも踏ん張りも弱くなる」


 俺はすぐに答えた。実際にやりながら。


「その通り。床の反発を利用して、ジャンプや踏ん張り、走る、歩くなどをしているけど、足指を使うことができないと、床の反発が利用できないんだ」


 高宮コーチはニヤリと笑う。


 そのとき、バスケ部を見学しにきた1年生がひとり、じっと練習を見ていたことに気がつく。


「興味あるか?」


 高宮コーチは1年生に声をかけて、招き入れた。


「ちょうど、見学にも来てくれたことだし、皆で試してみたいことがある」


 高宮コーチは笑顔を見せたまま、やり方を説明する。


 試したいことってなんだろう?

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