新チーム

 なんとか3年に上がれたー! 俺は村野樹むらのたつる城伯高校じょうはくこうこうバスケ部。


 勉強が嫌いで、授業中、寝てばかりいたから、さっぱりわからない。だけど、バスケ部の顧問、高宮コーチにちゃんと勉強しないと、バスケできないぞと言われて、必死だった。


 バスケ部のマネージャー、関戸美香せきどみかに勉強を教えてもらい、ギリギリだけど、赤点は免れたんだ。


 ごめんな、勉強は頭に入ってこないんだよ。でも、こんな俺に付き合ってくれた美香に感謝だ。


 3年はクラス替えがない。


 だから、あまり変わったという感じはしないな。


 バスケ部でも一緒の斉木慧さいきけいも同じクラスだ。


 慧はイップスになってしまい、まだ、完全ではないが少しずつ克服していこうと努力しているんだ。


 ちなみに慧はバスケ部のキャプテンだ。ついでに俺は副キャプテンを任されている。


「まぁ、良かったよ。無事に3年になれて」


 美香は俺の背中を強くバシッと叩く。


「いってぇ……美香、力あり過ぎ……」


「そんなに力入れてないでしょ」


 美香は俺を睨みつけている。こわッ。あまり余計なこと言わないでおこう。女の子は……いや、美香という奴は恐ろしい。あっ、これは美香には内緒。また、どつかれる。



 今日の予定は始業式のみ。始業式が終われば楽しみの部活だぁ!


「……バスケ馬鹿」


 はしゃいでいる俺を見て、美香は呆れかえっている。


 そんな話をしているうちに、始業式の時間。全校生徒が体育館に集まる。といっても、2年と3年のみだ。1年生は翌日の入学式で初めましてとなる。


 今年はバスケ部にも入部してほしいな。バスケのことしか頭にない俺は、始業式の間、全く先生の話を聞いていなかった。話が長い。


 先生の話をまともに聞いている人なんていないと思うけど。慧でさえ、先生の話を聞いていない。欠伸をして暇そうだ。


 1時間くらい経ったか、ようやく始業式が終わって、教室に戻る。あとは面倒だけどホームルームだな。


「おぉ、ちゃんと3年になれたんだな」


 クラスは違うが、バスケ部の仲間、栗本達也くりもとたつやが茶化してきた。


「おまえ、いつも赤点だもんな~」


田畑貴たばたたかしが笑って、パンパンと俺の肩を叩く。


 貴もバスケ部の仲間。そういえば、達也と貴は同じクラスだったな。


「失礼な、俺だってやるときにはやるんだよ」


 俺、なんかいじられてる?


「じゃあ、また、後でな」


 達也が手を振って、教室に戻っていく。


「あぁ」


 俺も教室に戻る。


 ホームルームは、そんなに長くないが、これはこれで、意味があるのかと思ってしまう。まぁ、連絡事項もあるから大事なのかもしれないけど。


「では、今日は終わり。気をつけて帰って下さい」


 担任の先生が言った途端、俺は真っ先に飛び出した。

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