イップス7
メンタルトレーニングが終わって、通常の練習に入る。普段、部活は2時間と決めてやっているが、今回はメンタルトレーニングもあったので、2時間半の練習になる。
メンタルトレーニングを30分、今日から毎日やることになった。心技体というようにメンタルが一番大事だからな。ただ、メンタルトレーニングは部活がオフの時も寝る前にやって欲しいということだった。
毎日やっていると忘れることもあるけれど、それはそれでいいから、ふとした時にやったほうが良いらしい。なるべく俺もやろう。やっていくうちに緊張しても、集中していいパフォーマンスができるかもしれない。
「さて、ここからはバスケの練習だ」
高宮コーチが声をかける。
よし、やるぞと準備をし始めた時、ひそひそ声で高宮コーチが俺に呟く。
「バスケの時は頭が働くんだな。でも、この間もギリギリだったらしいから、ちゃんと勉強もしろよ。赤点とったら、バスケどころじゃないぞ」
「えぇ~!? それは勘弁です」
図星だったため、俺はギクッとした。勉強しないとバスケできないのかぁ。でも、もうすぐ期末テストだっけ。
高宮コーチと俺のやりとりに、慧は笑っている。
「また、美香に教えてもらえばいいんじゃないか?」
「いや、それは……その……」
でも、慧はバスケができなくて辛いだろうに、笑顔で普通に会話している。それが嬉しい。
「俺もさ、今は思うようにバスケができないかもしれないけど、きっと、またできるって信じて、バスケ頑張るからさ」
「慧……」
慧の言葉を聞いて、灯が泣きそうな顔して慧に飛びついてきた。
「おいっ、何やってるんだよ、灯!」
慧は強引にハグしてくる灯を、むりやり引き離した。
「だってさ~」
灯の気持ちもわからなくはない。皆、慧を心配しているんだよな。
「あのさ、確かにトラウマのせいで、バスケができなくなっているかもしれないけど、俺、別にイップスになったからって、いつまでも落ち込んでねぇよ」
慧はため息をつきながら、でも、穏やかなだった。
「ありがとうな、皆。俺、必ずイップス、克服してみせるから。ちゃんとメンタルトレーニングもしてさ」
そんな話をしながら、バスケの練習を始めた。
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