プロ選手との練習6

 ドリブルの練習をしたあとは、シュート練習。


 ゴール下、ミドル、フリスロー、スリーポイントと入ったら移動していく。


 コーナーから始まって半周する。


 まずはプロ選手の見本からだ。


 シュッ


 いとも簡単に次々とシュートを決めていく。


 手首が柔らかい。柔らかくスナップを利かせて、アーチを描く。


 依田選手がスリーポイントを放つ。


 そのスリーポイントは面白いように吸い込まれていく。


 本来、依田選手はスモールフォワードだから、ドリブルで切り込んでシュートすることが多い。


 だけど、最近のバスケはスリーポイントが重要となっており、チャンスがあれば、誰でも打つ。


 そのため、依田選手もスリーポイントを打てるようにしている。


 今はポジション関係なく、スリーポイントを打てないと勝つのは難しくなっている。


 特に平均身長が低い日本は。


 いろいろな対応ができるようになると、相手を惑わすことができる。


 つまり、求められるのはオールラウンダー。


 依田選手が全てのエリアでのシュートを決め終わった後、シュートするときのボールの角度について説明した。


「45度の角度にボールが浮いていると、シュートが入りやすい」


 俺たちも早速、45度の角度を意識しながら、練習する。


 初めはコツを掴めず、なかなか入らないことが多かったが、45度の角度になるように打つ感覚がわかってきた。


 すると、面白いくらいにボンボンシュートが入っていく。


「うそっ、凄い、こんなにボンボン入るのか?」


 自分が打ったシュートのようには見えなくて、俺は唖然とした。


 マネージャーとしてサポートしてくれている美香は、よく動きやフォームを見ているため、明らかに変わったとすぐに見抜いた。


「樹、手首のスナップさせる時の向きで、かなり変わったね。その感覚だよ」


 美香に言われて、俺は嬉しくなって、さらにモチベーションを上げた。


 なんだ、これ。外れる気がしない。もし、外したとしたら、ボールの角度が45度にないことと、手首の向きだ。


 あっという間に全てのエリア内でシュートを決めた。


「じゃあ、今度は時間制限ありでやってみよう」


 と言い出したのは、笹本選手。


 今と同じことを、時間制限ありでやるのは焦るかもしれない。プレッシャーのかかった状態でできるようにするのか。


「いいね、プレッシャーのかかった状態でやると、乱れやすい。そこをどうやって取り戻すか、重要だね」


 並木選手が笹本選手に同意する。


 やっぱりそうか。時間制限をすることで、あえてプレッシャーのかかった状態にするのか。


 メンタルがそんなに強くない俺は、一気に緊張感が増す。


 それでも、今の感覚でできれば入るはず。


「時間制限は1分。あえて、短くしていくことでプレッシャーがかかりやすいから。さらに、さっきは一本だったけど、今度はどのエリアも2本連続入るまで」


 黒崎選手が付け加えた。


「1分で全てのエリアからシュート2本連続で入れる。難しそうだな」


 珍しく拓斗が呟く。


 いつもは練習メニューには文句を言わない拓斗でさえも、プレッシャーがかかるのだろうか。


 さあ、1分以内にハーフコート、全てのエリアでのシュート開始。


 拓斗が挑戦している。


 今まで時間制限しての練習はなかったから、ちょっと焦っているみたいだ。


 コーナーからのスリーポイントが、なかなか入らない。


 ちなみにどこから打つかは、自由だ。好きなところから打っていい。


 拓斗はコーナーのスリーポイントから決めようとしていた。


 時間との勝負。時間制限で焦ってしまっているのか、フォームも定まらず、なかなか入らない。


 美香も気が付いていたようで、声をかける。


「手首のスナップが利いてない。力抜いて」


 拓斗は焦りから、フォームを正そうという意識が持てないようで、ひたすらにシュートを打ちまくっていた。


 ブザーがなる。


 1分経過の合図だ。


 結局、最初のコーナーのスリーポイントで、1分という制限のプレッシャーから、全く入らずに終わってしまった。


 でも、確かに1分あれば、バスケの場合は、逆転できることもある。たった1分でもたくさん得点を入れることもできる。


 そんな状況のときでも、焦らずシュートを打てるようにならないと。


 これはいい練習だ。こうやって練習していくうちにプレッシャーも強くなるはず。

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